著者
松川 隆
出版者
山梨大学医学会
雑誌
山梨医科学雑誌 = 山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.13-20, 2007

周術期における体温管理の重要性は近年ますます高まっている。体温は中枢温と末梢温の2 つに分けられる。体温調節としては自律性の体温調節機構が重要である。それらにより発汗,末梢血管収縮,シバリング(ふるえ)などが調節されており,その中枢の本幹は視床下部(特に前方)とされている。麻酔中の体温変化は低下(すなわち負)することが多く,それによって,様々な副作用・合併症が生じることが近年明らかとなってきた。大きい副作用(心筋虚血の頻度増加,出血増加,感染増加)などは手術患者のQOL や医療費に多大な影響を与える可能性がある。体温調節,低体温発生のメカニズムを熟知し,適切な体温管理を行うことは臨床上極めて重要である。
著者
野崎 由美 三森 徹 中嶌 圭 岩尾 憲明 山本 健夫 西山 真由美 中澤 正樹 小松 則夫 桐戸 敬太
出版者
山梨大学医学会
雑誌
山梨医科学雑誌 = 山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-28, 2013

症例は67歳,女性。発熱と頸部リンパ節腫脹を認め,他院に入院した。入院後,肝機能障害の増悪と血小板減少の進行,さらに末梢血中への異常細胞の出現を認めた。頸部リンパ節生検後にステロイドパルス療法を開始したが,意識障害と呼吸状態の悪化を認め,当院に転院した。転院時,pH7.238,乳酸値15.9 mmol/? と高度の乳酸アシドーシスを認めた。転院後の第3病日に右脳内出血を併発し,第9病日に永眠された。経過中,リンパ節生検結果よりびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断した。重篤な乳酸アシドーシスを伴った原因としては,腫瘍細胞からの乳酸産生の亢進や,剖検により確認された腫瘍細胞の肝浸潤による肝機能障害からの代謝の遅延などが想定された。悪性リンパ腫の経過中に乳酸アシドーシスを合併した症例の報告例は極めて少なく,予後不良であるが,その要因および治療に関して文献的な考察を加えて報告する。