著者
松川 隆
出版者
山梨大学医学会
雑誌
山梨医科学雑誌 = 山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.13-20, 2007

周術期における体温管理の重要性は近年ますます高まっている。体温は中枢温と末梢温の2 つに分けられる。体温調節としては自律性の体温調節機構が重要である。それらにより発汗,末梢血管収縮,シバリング(ふるえ)などが調節されており,その中枢の本幹は視床下部(特に前方)とされている。麻酔中の体温変化は低下(すなわち負)することが多く,それによって,様々な副作用・合併症が生じることが近年明らかとなってきた。大きい副作用(心筋虚血の頻度増加,出血増加,感染増加)などは手術患者のQOL や医療費に多大な影響を与える可能性がある。体温調節,低体温発生のメカニズムを熟知し,適切な体温管理を行うことは臨床上極めて重要である。
著者
松川 隆 奥山 克巳 佐藤 宏明
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

【平成17年度】健康成人男子(計16名)を対象Group 1:麻酔前保温なし(コントロール群)(n=8)手術室で用いられるブランケットをかけて30分間安静Group 2:麻酔前保温あり(保温群)(n=8)温風式加温装置で保温を開始(30分間)ミダゾラム:0.05mg/kg(筋注)プロトコール1.Group 1、2において30分間の前保温(ありなし)状態2.30分後にミダゾラム筋注(0.05mg/kg3.両群共にトランクスのみの状態で室温に保つ4.測定項目(開始時、前投薬投与時、その後5分毎40分後迄)中枢温=鼓膜温(右、左)末梢温:末梢温=皮膚温:胸部、上腕、前腕、示指、大腿、下腿、栂指血圧(SBP, DBP)、心拍数、SpO230分後:鎮静度、室温:22〜23℃<結果>麻酔前保温あり群でミダゾラム前投薬による体温低下が有意に減少した【平成18年度】年齢によって麻酔前投薬と麻酔前保温の効果がどのように異なるかを臨床的に検討。麻酔前投薬、麻酔前保温を行った場合に全身麻酔導入後の中枢温低下に年齢によってどのように差異が認められるかを検討。<対象>予定手術患者(全身麻酔)(ASA分類I〜II)計30名。Group 1:若年者(20〜55歳)(n=15)、Group 2:高齢者(60〜80歳)(n=15)<プロトコール>麻酔導入30分前に2グループ共にミダゾラム筋注(0.05mg/kgし、30分間の麻酔前保温(温風式加温装置)麻酔導入:プロポフォール(2mg/kg)、ベクロニウム(0.12mg/kg)維持:酸素-亜酸化窒素-セボフルラン(1.5-2.5%)(いわゆるGOS)測定項目(麻酔前投薬時、麻酔前保温開始直前から10分ごと手術終了時迄)中枢温:鼓膜温(右、左)末梢温:皮膚温(7ヶ所)胸部、上腕、前腕、示指、大腿、下腿、栂指血圧(SBP, DBP)、心拍数、SpO2、室温:22〜23℃。<結果>高齢者の方が若年者よりも麻酔導入時の"再分布性低体温"による体温低下が著しいことが示唆された。高齢者において積極的な麻酔前保温がより重要である。