著者
竹下 明裕 古牧 宏啓 浅井 隆善 梶原 道子 岩尾 憲明 室井 一男
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.711-717, 2016-12-20 (Released:2017-01-12)
参考文献数
17
被引用文献数
1

近年,若年者の献血人口の減少が問題になっている.将来の献血を担う,高校生の献血に対する意識調査を行うことは献血の将来を考えていく上で重要である.アンケート方式による50項目の意識調査を行い,献血に関する高校生への広報や教育の現状と高校生の意識を調査した.調査は連結不可能の疫学調査として行い,35校中30校から協力が得られ,調査対象16,333人のうち15,521人(95.0%)より回答を得た.男性49.3%,女性は49.8%であった.献血を経験した高校生は1,198人(7.7%)で,未経験者は88.6%であった.疲労感や睡眠不足,ダイエット等は採血の際に注意すべき生活習慣である.献血可能年齢と体重,献血場所,献血に関わるリスク,血液の海外依存度等の献血に関する知識は不十分であった.献血への関心度は献血経験のある高校生で高く,初回献血の重要性が示唆された.高校への出張献血や献血に関する授業は献血を推進していく上で有用である.しかし献血に関する教育手法と普及活動にはさらに工夫が必要であると思われる.
著者
野崎 由美 三森 徹 中嶌 圭 岩尾 憲明 山本 健夫 西山 真由美 中澤 正樹 小松 則夫 桐戸 敬太
出版者
山梨大学医学会
雑誌
山梨医科学雑誌 = 山梨医科学雑誌 (ISSN:13485091)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.23-28, 2013

症例は67歳,女性。発熱と頸部リンパ節腫脹を認め,他院に入院した。入院後,肝機能障害の増悪と血小板減少の進行,さらに末梢血中への異常細胞の出現を認めた。頸部リンパ節生検後にステロイドパルス療法を開始したが,意識障害と呼吸状態の悪化を認め,当院に転院した。転院時,pH7.238,乳酸値15.9 mmol/? と高度の乳酸アシドーシスを認めた。転院後の第3病日に右脳内出血を併発し,第9病日に永眠された。経過中,リンパ節生検結果よりびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)と診断した。重篤な乳酸アシドーシスを伴った原因としては,腫瘍細胞からの乳酸産生の亢進や,剖検により確認された腫瘍細胞の肝浸潤による肝機能障害からの代謝の遅延などが想定された。悪性リンパ腫の経過中に乳酸アシドーシスを合併した症例の報告例は極めて少なく,予後不良であるが,その要因および治療に関して文献的な考察を加えて報告する。
著者
中嶋 ゆう子 岩尾 憲明 宮崎 かおる 塚原 達幸 市川 太一 平岡 秀子 小宮山 佐恵子 小野 美代子 浅川 澄江 中村 弘
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.42-48, 2012
被引用文献数
3

山梨県では平成18年から山梨県合同輸血療法委員会I&A委員会による輸血医療の点検視察が開始された.施設の自発的受審ではなく県が視察病院を指定して,10施設の中小規模病院に対して点検視察が実施された.点検視察の結果「改善すべき」と指摘された事項は輸血検査や輸血用血液製剤の管理に関する項目が多く,「改善が望ましい」と指摘された事項は輸血管理体制や製剤の保管管理に関する項目が多かった.点検視察の指摘事項に関する改善状況のアンケート調査の結果では病院間で改善状況に差があることが示され,改善が進まない背景には輸血責任医師が兼任で実質的に不在であることや検査技師の人員不足等の問題があると考えられた.I&A活動の目的は輸血実施手順や輸血管理体制の標準化により病院の規模に関係なく安全で適正な輸血が実施されることである.山梨県I&A委員会の継続的な取り組みによって県内の中小規模病院の問題点の改善と輸血医療の向上を目指し,将来的には中小規模病院の学会I&A受審につなげたいと考える.<br>
著者
岩尾 憲明 須波 玲 大森 真紀子 樋口 浩二 伏見 美津恵 中嶋 ゆう子 深澤 宏子 小笠原 英理子 小室 真祐子 奥田 靖彦 平田 修司 星 和彦
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.486-491, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
14
被引用文献数
3 4

分娩時大量出血が生じた際に希釈性凝固障害,あるいは播種性血管内凝固症候群の併発が止血を困難にしている場合が少なくない.また,分娩時出血は外科的縫合だけでは止血できない特殊性もある.このような状況では血液凝固因子を速やかに止血可能域の濃度に上昇させて止血を図ることが最も重要である.そのためには新鮮凍結血漿だけでは不充分であり,凝固因子の濃縮製剤であるクリオプレシピテートを使用して急速に凝固因子を補充することが必要である.当院産科において分娩時に大量出血を生じた14症例(平均出血量5,005.6ml)に対してクリオプレシピテートを投与したところ,全例でフィブリノゲン値の速やかな上昇を認め,止血を得ることができた.大量出血による希釈性凝固障害で高度の低フィブリノゲン血症を生じた産科危機的出血に対してはクリオプレシピテートを併用した輸血療法が極めて有用であると考えられる.