著者
神野 秀雄
出版者
愛知教育大学障害児治療教育センター
雑誌
治療教育学研究 (ISSN:09104690)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.1-12, 2009-02

本論文は,筆者が最近特に関心をもっている自閉性障害に関する3つのテーマに関して言及したものである。①わが国における戦前の自閉症に関する専門家による記載:山下清をはじめとして八幡学園に入所していた自閉性障害と思われる子どもたちについて記載した戸川行男,および杉田直樹によるアスペルガー障害と重なると思われる性格異常児に記載されている「病的奇矯症」ついて取り上げた。②FC(Facilitated Communication)について:欧米では,1990年代前半にFC擁護派と批判派の激しい対立があった。その後の10年余りのわが国や欧米の動向について検討したところ事態に変化は見られず,FCに関する論文数は著しく減少してきた。FC現象は Pseudo の世界と思われるが,なぜそのような現象が起きてくるのか,その真実の機序を明らかにする必要がある。③解離性障害について:最近自閉性障害に対し「解離」という視点から論ぜられることがある。2つの名前を主張した事例,「反対側の自分」が出現した事例(玉井),「ばしばしまん」に変身し集団に適応した事例を提示し,このような現象について「解離」という概念を使用することの問題点について論じた。