著者
村田 勝 今井 佐和子 佐藤 大介 佐々木 智也 有末 眞
出版者
日本硬組織研究技術学会
雑誌
Journal of hard tissue biology (ISSN:13417649)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.143-147, 2002-03-01
参考文献数
23
被引用文献数
2

我々はリコンビナントBMP(r h BMP-2)アテロコラ-ゲンコラ-ゲンインプラントシステムが骨膜下骨増生に極めて有効であることを報告している。本研究では、骨膜を剥離せず部分的に線状切開を加えた骨膜状にr h BMP-2/コラーゲン複合物を埋入し、骨膜と母骨の細胞組織反応や骨誘導について形態学的に観察することを目的とした。ウイスター系雄性ラット(40週齢)を正常骨膜観察に5匹、切開骨膜上実験のために20匹使用した。全身麻酔科で頭部に皮下切開を加えた。r h BMP-2(10mg)/I型アテロコラーゲン(10mg)複合物を挿入後、1,2,4,8週目に5匹ずつ屠殺し、埋入物入と頭部を一塊として摘出した。脱灰切片作成後、ヘマトキシリン-エオジン染色とエラスティカワンギーソン染色、増殖細胞核抗原(PCNA)抗体による免疫染色を行い光学懸顕微鏡で観察した。正常骨膜には扁平な骨芽細胞層、菲膜化した線維層、脂肪層からなる3層構造が認められた。PCNA陽性細胞率は0.8±4.6%、非切開部で9.3±1.5%であった。2週後、埋入物層に環状の骨形成がみられ、骨膜切開部でのみ母骨と増整骨は新生骨で連続していた。4週後、非切開部骨膜は正常骨膜に類似した構造を呈した。8週後、増生骨の骨髄形成が進行し、骨膜切開部のみに形成された骨架橋は維持されていた。非切開部には骨膜を含む軟組織が介在していた。以上より、r h BMP-2/アテロコラ-ゲンインプラントシステムハ骨膜上で骨増生が可能であり、切開部のみで骨架橋が形成された。また切開部以外の骨膜は非石灰化組織として増生骨と母骨間に介在したことから、骨膜は骨形成能を有する組織境界膜として存在する恒常性機構を有している可能性が考えられた。