著者
加藤 伸司
出版者
日本老年臨床心理学会
雑誌
老年臨床心理学研究 (ISSN:24364568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.47-55, 2023-03-30 (Released:2023-04-10)
参考文献数
8

HDS-R は,認知症の鑑別の補助的検査として使用されることが多いため,20 点/21点のカットオフポイントを中心とした得点評価が重視されている。HDS-R の設問は見当識や様々な質的に異なる記憶に関する項目で構成されており,それらの情報が必ずしも臨床場面やケアの場面に活用されていない。検査者やケアに当たる人は,HDS-R で得られる情報の意味を理解し,日常生活への影響やケア場面における留意点などを適切に評価できることが重要である。
著者
松田 修
出版者
日本老年臨床心理学会
雑誌
老年臨床心理学研究 (ISSN:24364568)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.36-46, 2023-03-30 (Released:2023-04-10)
参考文献数
14

世界標準の知能検査として長年国内外で使用されているWechsler Adult Intelligence Scale(WAIS)の第4版,WAIS-IVについて概説する。特に高齢者に対して使用する際の留意点について,検査能と検査者能という観点から論じる。WAIS-IV は適用年齢の延長や図版および問題の変更等により,WAIS-IIIよりも使用しやすい検査となった。また,検査能も申し分なく,軽度認知障害や軽度アルツハイマー型認知症など,老年期に多い疾患・病態の臨床評価にも有用である。しかしながら,標準的な実施法での所要時間が1時間を超える本検査は,高齢者にとって負担が大きく,使用者は実施の必要性を慎重に検討する必要がある。いずれにしても、WAIS-IVは,高い検査者能を有する検査者が使用しない限り,高齢者のために役立てることはできない。
著者
長田 久雄
出版者
日本老年臨床心理学会
雑誌
老年臨床心理学研究 (ISSN:24364568)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.27-31, 2019-10-20 (Released:2023-01-04)

本稿では、本学会の設立に際して老年臨床心理学の可能性と課題について述べる。特に,通常,老年臨床心理学の課題とされる認知症やうつ病ではなく,対象として可能性のある領域に関して筆者の体験に基づき私見を述べる。また,老年臨床心理学の対象に関して,活動拡大の可能性について考察する。高齢者の就労の問題など,今後,老年臨床心理学の実践が求められる領域に関しても言及した。老年臨床心理学は必要性が一層高まると考えられるので,本学への期待も大きい。