著者
堀部 要子
出版者
春日井市立西山小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2017

本研究は、校長のマネジメントのもとに児童の学習面及び行動面の困難さへの支援方法を検討し、効果的な学校経営モデルを作成することを目的とした。米国のRTIモデルを応用した3層の支援システムを組み、全校児童を対象とする支援を実施した。学習面では、①ステップ1 : 授業のユニバーサルデザイン化による授業内での学習支援、②ステップ2 : 対象児童を絞り込みながらの読み書き計算の取り出し学習支援、③ステップ3 : 通級指導教室における個別の教科の補充指導を実施した。行動面では、①ステップ1 : クラスワイドのソーシャルスキル・トレーニング(以後、SST)、②ステップ2 : 取り出し少人数SST、③ステップ3 : 通級指導教室における個別のSSTを実施した。全校スクリーニングテスト、アンケートQ-U(以後、Q-U)(河村, 1999)、行動観察、児童・教員アンケートから効果の検証を行った。学習面のステップ1では、教員が学級児童のアセスメントに基づいた焦点化・視覚化・共有化を意識した授業づくりに取り組むようになるとともに、児童の授業への参加度が高まった。ステップ2では、在籍数の約10%の児童を対象に学習支援を実施した結果、対象児童の基礎的な学力が向上した。行動面のステップ1では、児童全体のソーシャルスキルの向上が観察され、Q-U得点のt検定による分析の結果、教育的な効果のある有意差が認められた。ステップ2では、在籍数の約3%の児童を対象に少人数SSTを実施した結果、学級での般化がみられるようになった。その後、学習面・行動面で改善の少ない児童が、ステップ3で個別の集中的な指導を受け、課題の改善に向かっている。本研究実践により、対象を絞り込みながら段階的に支援を進める多層指導モデルを導入した校内支援システムの有効性が示された。今後は、校長の機能的な関わり方を見直し、学校経営モデルとして整理していきたい。