著者
千葉 勝吾
出版者
東京都立大島高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

1 調査の概要質的調査として大都市と地方の下位ランク校6校の生徒及び卒業生20名に対する面接調査をおこない、高校における進路指導の効果と外部要因の影響について検討した。量的調査として大都市部の専門高校1校の3学年全員分の進路決定過程についてのデータを分析して、大都市の他の高校や地方の高校と比較し検討をおこなった。2 研究の成果(1)下位ランク校の生徒たちは、計画的に可能な限り少ない努力で楽をしながら、成績は低位であっても卒業して、フリーターも含めたなんらかの進路実現を果たすという「自己を充足させるメカニズム」を持つということが確認され、さらに調査から判明したことは以下の3点である。第1は、質問紙調査では高校入試において.実際に受験した高校が第1希望だったと回答するものの、実際のところは入試のランクを下げた結果の選択であり「潜在的」な不本意入学者という点である。第2には、生徒たちの学校生活を送る方策の方向性は、消費社会に引き寄せられたものとなっているものの勉強嫌いで何事にも意欲のない性格的な特性をもつわけではないことがあきらかになった。第3には、しっかりとした進路意識や進路選択の意志のないままに、進路決定に進まざるを得ない場面が少なくないとうことがわかった。(2)進路形成について、生徒一人一人の進路希望や進路指導の経過を逐一記載し、指導の状況を管理するためのデータを分析した結果、学校が提供する指導/支援は進路形成のチャンネルとして捉えることができた。具体的には、(A)「コーチング」実践と呼ばれる、教師がボランタリに課外のプログラムを設けて、生徒を支援しようとする特別な指導体制。(B)A商業高校における基本的な進路形成チャンネルである「全体指導」の枠組。(C)「個別サポート指導」というべき進路形成チャンネル。(D)「離脱」のチャンネルーの4つが確認された。