著者
西堀 すき江 並木 和子
出版者
東海学園大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

焙焼したココア,コーヒー,ピーナッツ,ポップコーン,ローストビーフ,チキン等を加熱すると,それらの食品中の糖とアミノ酸が反応し、褐変と同時に芳ばしい香気が発生する.この中にはきわめて多種多様の揮発性物質が存在するが,これらはNH3・H2S・CH3SCH3・CH3SHのような常温でガス状のもの,ストレッカー分解により生成するアルデヒド類,N・Sを含むヘテロ環化合物に大別することができる.ピラジンはN・Sを含むヘテロ環化合物の一種で,焙焼によって生成するフレーバーの主なものはピラジン誘導体である.焙焼した食品からは70種以上のピラジンが同定されている.これはストレッカー分解の結果生成したエナミノール,またはアミノケトン誘導体の縮合により生成するもので,アルキル置換基C1〜C3が普通であるが,アセチル基,シクロペンタン環,フラン環を有するものも存在する.12年度はピラジン標品の生理活性と構造相関に関して検討した.今年度は実際の食品であるコーヒーと胡麻について検討した.胡麻は水蒸気蒸留の変法でLickens-Nickerson型の改良でSimultaneous distillation extraction(SDE)法と称される連続水蒸気蒸留法により抽出した.抽出溶媒により,血小板凝集阻害率が異なり,エーテル抽出の方が抗血栓効果が高くなった.コーヒーの焙煎における抗血栓効果は焙煎度の高いイタリアンローストがノーマルローストより高いことが分かった.また,抽出液を酸性,中性,塩基性の3種類に分類し検討すると,塩基性区分の抽出液が最も高い抗血栓効果を示すことが分かった.ピラジンは塩基性の物質であるため,コーヒーの揮発性抽出物の中でピラジンが抗血栓効果に関与することが示唆された.ガスクロマトグラフィーによるピラジンの生成量に関するピークの検出で,イタリアンローストがノーマルローストより多くのピークが認められたことは,コーヒーの抗血栓効果におよぼすピラジンの寄与が考えられた.