著者
寺本 憲之
出版者
滋賀県農業総合センター農業試験場
巻号頁・発行日
no.41, pp.32-52, 2001 (Released:2011-03-05)

天蚕の野外における食樹調査と室内における摂食試験による飼料適性調査を滋賀県において実施した. 野外調査によって,ブナ科に属するナラガシワとバラ科に属するカマツカの2種を天蚕食樹として新しく記録した.また,室内調査によって,ブナ科に属するイチイガシ,イタグリ,シイグリおよびブナ,カバノキ科のイヌシデ,クマシデ,アカシデ,サワシバ,ヤシャブシおよびシラカンバ,ヤマモモ科のヤマモモ,ニレ科のムクノキ,バラ科のヒメリンゴおよびアンズ,そしてマンサク科のアメリカフウおよびフウ,合計16種を新室内飼育記録として追加した.今回の新記録を追加して天蚕の食樹記録の整理検討を行ったところ,野外食樹記録が13種,室内飼育記録が19種,併せて,天蚕幼虫が摂食してほぼ正常に成育できる樹種は32種と判断された.摂食試験の結果から,天蚕の最適性飼料樹としてクヌギ,アベマキ,アラカシ,ブナ(ブナ科)およびアメリカフウ(マンサク科)の5種を選定した. 以上の結果と既知食樹記録を総括して天蚕の食性に関する再検討を行ったところ,天蚕はブナ科に属する植物を中心に食するが,植物分類学上から考察すると,ブナ目群(ブナ目ブナ科・カバノキ科,ヤナギ目ヤナギ科,イラクサ目クワ科・ニレ科)およびバラ目群(バラ目バラ科,マンサク目マンサク科,ムクロジ目カエデ科)の2植物目群,すなわち植物分類学上で類縁関係が高い,まとまった植物群に属する植物の葉を食することが明らかになった.また,天蚕の食性には個体あるいは系統変異があり,個体選抜による育成によって,本種の食性は上記の植物科に属する植物の範囲内で拡張できる可能性が示唆された.
著者
寺本 憲之 山中 成元
出版者
滋賀県農業総合センター農業試験場
雑誌
滋賀県農業総合センター農業試験場研究報告 (ISSN:13470035)
巻号頁・発行日
no.45, pp.58-65, 2005-03
被引用文献数
1

農業資材を利用したニホンザルとニホンイノシシ併用のテント型簡易侵入防止柵を開発した。本柵はイノシシよけ網とサルよけ網とを合体化させたもので、イノシシ網(側柵網)とサル網(天井網)の端面を結束バンドで連結合体させ、サル網の他方端面を柵内方向に柵内側弾性ポール先端で支えて高く傾斜をつけたテント型構造を有する。また、現地圃場において、本柵のニホンザルとニホンイノシシに対する侵入防止効果についての野外試験を実施したところ、本柵は両獸種に対して高い防除効果が認められた。さらに、本テント型柵をおうみ猿落・猪ドメ君「サーカステント」と命名した。
著者
金子 誠 角田 巌 冨家 和典
出版者
滋賀県農業総合センター農業試験場
雑誌
滋賀県農業総合センター農業試験場研究報告 (ISSN:13470035)
巻号頁・発行日
no.45, pp.37-43, 2005-03
被引用文献数
1

少量土壌培地耕の開発目的の一つは、土壌病害を回避することである。しかし、現場ではトマト青枯病の発病が確認されている。少量土壌培地耕は、用いる培土量が少ないため、太陽熱消毒が有効であると考えられる。そこで、青枯病菌の死滅温度および熱処理時間を解明し、太陽熱消毒によるトマト青枯病対策について検討した。1)トマト青枯病菌は、少量土壌培地耕内に侵入した場合、容易に培養液と培土内で菌濃度を高め少量土壌培地耕内で蔓延する。2)土壌中の青枯病菌は60℃1時間以上または45-55℃3時間以上の熱処理で死滅する。罹病トマト残さ中の青枯病菌は、60℃1時間以上または50-55℃3時間以上または45℃6時間以上の熱処理で死滅する。3)7月下旬-8月上旬に太陽熱消毒を実施した場合、ハウスを密閉した状態では1日間で、また、晴天時にハウスを開放した状態でも1日間で青枯病菌を殺菌できる。栽培機器への影響を考えると、晴天時にハウスを開放して太陽熱消毒を実施する方が実用的である。
著者
寺本 憲之
出版者
滋賀県農業総合センター農業試験場
雑誌
滋賀県農業総合センター農業試験場研究報告 (ISSN:13470035)
巻号頁・発行日
no.41, pp.32-52, 2001-03
被引用文献数
1

天蚕の野外における食樹調査と室内における摂食試験による飼料適性調査を滋賀県において実施した. 野外調査によって,ブナ科に属するナラガシワとバラ科に属するカマツカの2種を天蚕食樹として新しく記録した.また,室内調査によって,ブナ科に属するイチイガシ,イタグリ,シイグリおよびブナ,カバノキ科のイヌシデ,クマシデ,アカシデ,サワシバ,ヤシャブシおよびシラカンバ,ヤマモモ科のヤマモモ,ニレ科のムクノキ,バラ科のヒメリンゴおよびアンズ,そしてマンサク科のアメリカフウおよびフウ,合計16種を新室内飼育記録として追加した.今回の新記録を追加して天蚕の食樹記録の整理検討を行ったところ,野外食樹記録が13種,室内飼育記録が19種,併せて,天蚕幼虫が摂食してほぼ正常に成育できる樹種は32種と判断された.摂食試験の結果から,天蚕の最適性飼料樹としてクヌギ,アベマキ,アラカシ,ブナ(ブナ科)およびアメリカフウ(マンサク科)の5種を選定した. 以上の結果と既知食樹記録を総括して天蚕の食性に関する再検討を行ったところ,天蚕はブナ科に属する植物を中心に食するが,植物分類学上から考察すると,ブナ目群(ブナ目ブナ科・カバノキ科,ヤナギ目ヤナギ科,イラクサ目クワ科・ニレ科)およびバラ目群(バラ目バラ科,マンサク目マンサク科,ムクロジ目カエデ科)の2植物目群,すなわち植物分類学上で類縁関係が高い,まとまった植物群に属する植物の葉を食することが明らかになった.また,天蚕の食性には個体あるいは系統変異があり,個体選抜による育成によって,本種の食性は上記の植物科に属する植物の範囲内で拡張できる可能性が示唆された.