著者
長平 彰夫
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.1_12-1_20, 2010 (Released:2011-02-04)
参考文献数
81

本研究は,ここ20年間の産学連携に関する国内外の代表的な先行研究をレビューし,今後の研究に関しての示唆を行うことを目的とした.その結果,先行研究は,大きく3つのジャンルに分類できた.第1は,産学連携をイノベーションとの関係性から共同研究などを通じた知識や技術の移転活動のドライビングフォースとしてとらえるものであり,第2は,産学連携が企業や大学等の研究活動へ与える影響に関するものである.第3は,産学連携を新たな知識を創造する活動と捉え,研究生産性に関する科学社会学からのアプローチである.わが国の産学連携に関する論文投稿活動はここ10年,他国と比べて低調であり,異分野の研究者たちが産学連携学という横断的学術領域において結集し,学術活動としての産学連携を発展させていくことが必要である.
著者
北村 寿宏
出版者
特定非営利活動法人 産学連携学会
雑誌
産学連携学 (ISSN:13496913)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.1_39-1_46, 2011 (Released:2012-01-12)
参考文献数
13

国立大学における産学連携の実状を明確にするために,共同研究件数の推移について調査した. 共同研究件数で比較すると東京大学や京都大学のような大規模大学が上位に位置することが多いが,理系教員一人当たりの共同研究件数で比較すると,岩手大学,茨城大学,横浜国立大学,静岡大学,三重大学などの大学や理系単科大学の多くが高い値を示し,共同研究が活発に行われていることが明らかになった. 近年における中小企業を相手先とする共同研究の件数を調査した結果,一部の大学を除いたほとんどの大学で,横ばい,ないしは,減少傾向にあり,特に,東北北部,山陰,四国,九州に位置する大学の多くで低い傾向が見られた.この結果は,大学が位置する地元の中小企業との共同研究が進んでいないことを示唆しており,地域イノベーションの創出の推進役が大学とその近隣の企業であることを考えると,今後の改善に向けての取り組みが必要であると考えられる.