著者
藤川 智紀
出版者
独立行政法人農業工学研究所
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2004

国内の4カ所の農地(東京都,茨城県(以上,耕耘後裸地状態),青森県(牧草地およびデントコーン畑)を対象として,表層土壌の不均一性が土壌-大気間のガス移動に及ぼす影響を明らかにすることを目的に,地表面からのCO_2ガス発生量と土壌の理化学性を測定した.特に,未だ研究例の少ない表層土壌中のガス移動特性(ガス拡散係数,土中ガス濃度)とガス発生量の関係に注目した.ガス発生量の測定の結果,ガス発生量の変動係数(C.V.)は,4カ所で違いは見られず,0.16〜1.03であった.牧草地を除いては,時間の経過と共にC.V.は小さくなり,耕耘によってガス発生量の不均一性が大きくなり,その後均一になることが示唆された.土壌中のガスの拡散移動のしやすさを表すガス拡散係数の測定からは,土壌の気相率の不均一性よりもガズ拡散係数の不均一性が大きくなる傾向が見いだされ,気相の量だけでなく気相の構造(間隙構造)も,拡散係数の不均一性に影響を与えていることが明らかになった.また,ガス拡散係数と共に拡散移動の量を規定するガス濃度は深い層ほど大きく変動し,表層のガスの拡散移動量の不均一性は,より深い層でのガス濃度に大きく影響を受けることが分かった.このことから,ガス発生量の不均一性の解析の際に,表層だけでなく,より深い層のガス挙動の把握が重要であることが示唆された.各圃揚におけるガス発生量とガス拡散移動量の平均値の相関係数は0.75と高く,また特定の場合を除いて差も50%の間に収まり,表層土壌中のガス拡散移動が地表からのガス発生量に大きな影響を与えていることが確認できた.しかし,各測定点におけるガス発生量とガス拡散移動量の間には有意な関係は見いだせなかった.測定をおこなう範囲や方法の違いが影響している可能性も考えられるため,測定方法を改良し,更にデータを蓄積することが課題として残された。
著者
清水 夏樹
出版者
独立行政法人農業工学研究所
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

1.事例調査による有機性資源循環管理システムの阻害/推進要因の把握とシステム成立のために補完・整備すべき要素林業・製材を主産業とする中国地方の中山間地域および都市近郊農畜産業の盛んな千葉県北東部での事例調査により,有機性資源の発生・再資源化・再生資源の利用等の各段階の担い手となる組織について,各組織の役割や組織間の関係の実態を把握した。その結果,発生-再資源化までの段階は,関与主体の活動や行政による支援によって円滑に進み,循環管理システムの空間的広がりは,ほぼ旧町村(大字)までの単位で成立しうることが明らかとなった。再資源化-再生資源の利用段階(家畜ふん尿の堆肥化-堆肥の農地還元)の推進においては,それ以降の段階(農産物の流通・販売-消費)に関わる主体との連携が確立されていることがシステムの推進要因となっていた。また,再生資源の利用段階が円滑に進むための循環管理システムの空間的広がりは,現在(市町村合併前)の町域を越えた広範囲となることが示唆された。さらに,イタリア中部において,農産物加工業者や消費者(観光客も含む)を循環管理システムに関わる主体として位置づけ,これらの主体からシステムを支援する投資行動を導く仕組みについて調査し,日本における適用性を検討した。日伊間の土地所有制度や歴史的背景の違いに由来する要素も多く,全ての代替要素を示すことは困難であったが,農産物の流通・販売システムをサブシステムとして有機性資源循環管理システムに組み込むなど,システム拡張の必要性が示唆された。この新システム構築については,千葉県北東部において実証研究を継続する予定である。2.行政等によるシステム支援のための情報提供有機性資源の循環管理システムを支援する主体(行政やNPO,民間企業等)への情報提供のため,受入研究機関において実施された関連研究成果を含めた書籍の分担執筆・編集を行った。