- 著者
-
平下 政美
- 出版者
- 金城大学
- 雑誌
- 基盤研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 2001
【目的】最近体温の日内変動パターンが暑熱負荷様式の違いにより特徴的に変化することがラットを用いた実験で示された。本実験では冬期に一日一定の時間に繰り返し運動した後、熱帯地方へ移動することで12日間の連続的暑熱暴露を経験し、再び日本へ帰国したときの、基礎体温の経日的変化や、暑熱暴露経験前後の運動パフォーマンス(最大酸素摂取量:Vo_2maxと無酸素性作業閾値:AT)、体液量あるいは体温調節反応がいかに修飾されるかについて検討した。【方法】毎日一定の時間に持久的運動トレーニングを繰り返す被験者を用いて、日本とタイに合宿生活をさせ、この時の基礎体温、運動前後の安静時体温及び運動時発汗量を連日記録した。また暑熱暴露経験前後のAT(Vslope法)とVo_2max及び血液成分を測定・分析した。【結果と考察】基礎体温の経日的変動:日本における基礎体温は35.9℃であった。タイにおけるそれは36.4℃付近を推移し、再び日本に戻った2日で36.3℃と高いレベルを維持した。日本においては運動後の体温は運動前の体温に比べ常に低い値をしました。しかしタイではその逆であった。運動時発汗量は日本においてはおよそ700g/hを示したがタイで1400g/hと顕著に増加した。これに対して飲水量は日本では飲水量は観察されなかった。タイではおよそ500g/hであった。これらの結果からタイにおける基礎体温の上昇は慢性的な脱水の可能性が示唆された。また12日間の連続暑熱暴露経験後は血漿量が増加し、暑熱暴露前に比べて暑熱暴露後のVo_2maxやATは増加傾向を示した。この暑熱暴露後の運動能の上昇は血漿量の増加によるものと示唆された。