著者
平下 政美 田辺 実 桜田 惣太郎 平井 敦夫 紫藤 治 永坂 鉄夫
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.43-45, 1993-04-01 (Released:2010-10-13)
参考文献数
8

健康成人男子5名を被験者とし, サウナによる加温または運動負荷時の前額発汗量に対する深部体温と平均皮膚温の影響を線形重回帰モデルを用いて検討した.すべてのモデルは統計的に有意であった.サウナによる加温実験では, すべての被験者で前額発汗量と深部体温との間に有意な相関が得られた.しかし, 5例中3例の被験者では平均皮膚温と前額発汗量の間に有意な相関はなかった.運動負荷実験でも同様な結果が得られた.これらから, 高体温時の前額発汗量は主に深部体温に依存しており, 皮膚温度入力は関与しない可能性が示唆される.
著者
丹羽 健市 中井 誠一 朝山 正巳 平田 耕造 花輪 啓一 井川 正治 平下 政美 管原 正志 伊藤 静夫
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.151-158, 1996-02-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
20
被引用文献数
1 2

運動時の暑熱障害事故予防のための基礎資料を得るために, 男子大学生を対象に運動場の環境条件 (WBGT) の実態と, それに伴う発汗量や飲水量及び体温との関係ならびに運動時の水分補給の有無が体温調節反応に及ぼす効果について検討した.得られた主な結果は, 次の通りである.1.4月から9月までの期間, 同一時刻に練習を行った際のWBGTは4月以降上昇し, 8月に最高値に達した後下降した.2.自由飲水時の体重減少量は4.8~5.7g/kg・hr-1の範囲にあり, 各月間に有意な差異は認められなかった.3.発汗量および水分補給量はWBGTの上昇に伴って増大し, 両者の問に高い相関関係が認められた.しかし, 自由飲水時の口内温の変化量はWBGTの上昇にもかかわらず0.52±0.08℃であり, WBGTの増加に伴う変動は認められなかった.4.運動時の口内温の上昇は水分補給の有無によって異なり, 水分補給の場合で0.62±0.30℃, 非補給では1.09±0.54℃上昇し, 両者の間に有意な差異が認められた (p<0.001) .5.水分補給の場合の発汗量は10.455±2.272g/kg・hr-1, 一方非補給のそれは8.279±1.271g/kg・hr-1であり, 両者の間に有意な差異が認められた (p<0.01) .
著者
平下 政美
出版者
金城大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

【目的】最近体温の日内変動パターンが暑熱負荷様式の違いにより特徴的に変化することがラットを用いた実験で示された。本実験では冬期に一日一定の時間に繰り返し運動した後、熱帯地方へ移動することで12日間の連続的暑熱暴露を経験し、再び日本へ帰国したときの、基礎体温の経日的変化や、暑熱暴露経験前後の運動パフォーマンス(最大酸素摂取量:Vo_2maxと無酸素性作業閾値:AT)、体液量あるいは体温調節反応がいかに修飾されるかについて検討した。【方法】毎日一定の時間に持久的運動トレーニングを繰り返す被験者を用いて、日本とタイに合宿生活をさせ、この時の基礎体温、運動前後の安静時体温及び運動時発汗量を連日記録した。また暑熱暴露経験前後のAT(Vslope法)とVo_2max及び血液成分を測定・分析した。【結果と考察】基礎体温の経日的変動:日本における基礎体温は35.9℃であった。タイにおけるそれは36.4℃付近を推移し、再び日本に戻った2日で36.3℃と高いレベルを維持した。日本においては運動後の体温は運動前の体温に比べ常に低い値をしました。しかしタイではその逆であった。運動時発汗量は日本においてはおよそ700g/hを示したがタイで1400g/hと顕著に増加した。これに対して飲水量は日本では飲水量は観察されなかった。タイではおよそ500g/hであった。これらの結果からタイにおける基礎体温の上昇は慢性的な脱水の可能性が示唆された。また12日間の連続暑熱暴露経験後は血漿量が増加し、暑熱暴露前に比べて暑熱暴露後のVo_2maxやATは増加傾向を示した。この暑熱暴露後の運動能の上昇は血漿量の増加によるものと示唆された。