著者
大鐘 敦子
出版者
関東学院大学法学部教養学会
雑誌
関東学院教養論集 (ISSN:09188320)
巻号頁・発行日
no.29, pp.29-46,

フローベールの初期作品群には、後期のジャンルを超えた大作家になる以前の様々な作品が40 以上もあり、初期をどう捉えるかいくつかの見解がある。こうしたなか、初期作品における女性像は、後期に描かれるファム・ファタル的な女性像と異なり、ロマンティスムに影響をうけた宿命に屈する女性像たちが中心であった。フローベールの初期作品群におけるファム・ファタル的女性像の萌芽はどのようなものだったのだろうか。
著者
瀬古 潤一
出版者
関東学院大学法学部教養学会
雑誌
関東学院教養論集 = Journal of arts and sciences (ISSN:09188320)
巻号頁・発行日
no.27, pp.95-111, 2017-01

「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」と「風の夜の狂詩曲」は「ある貴婦人の肖像」、「前奏曲集」とならんでT・S・エリオットの初期詩篇の代表作であり、1911年、パリ遊学中に書き上げられた。本稿では両作品におけるエドガー・アラン・ポオの存在について論じることにする。特に注目するのは「モルグ街の殺人事件」との関係である。 エリオットはパロディやアリュージョンを駆使した特異な文学技法をどこで学んだのか。これはエリオット文学の根本、さらには、モダニズム文学の根本に属する問題であるにもかかわらず、いまだに結論は出ていない。ここにポオがどの程度関与したのか。エリオット研究においてポオの扱いは小さい。ポオ研究の領域ではすでにエリオットの詩論がポオの大きな影響下で書かれたという指摘がなされている。だが、この指摘に対するエリオット専門家の反応は鈍い。詩論ばかりか、エリオットがその特徴的な文学技法をある程度ポオから学んだ可能性が高い。ポオとの関係を探ることで、エリオット文学の核心に迫ることが出来るかもしれない。エリオット研究においてまだほとんど手つかずの問題である。そもそも、小説とエリオットの関係自体がこれまであまり問題になってこなかった。アメリカ文学者との関連についても議論は手薄である。 本稿の分析はあくまでも手始めである。初期詩篇におけるポオの存在を整理し、今後の探求の足がかりにすることが目的である。一部内容の重なる「J・アルフレッド・プルーフロックの恋歌」及び「風の夜の狂詩曲」と主としてポオの「モルグ街の殺人事件」との関連を指摘することになる。この作業にかかる前に、やや詳細にグローバー・スミスの論考を検討する。