著者
杉本 陽子
出版者
飯塚市立飯塚小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2009

1.研究目的:通常の学級に在籍する漢字の読み書きに困難のある児童に対して,個々のつまずきに応じて継続的な支援を行うために,一斉指導の中で展開できる新出漢字の指導法を研究開発する。2.研究方法:小学校1年生で学習する新出漢字の指導を効果的に進める「指導プログラム」と指導に活用する「支援教具」を作成し,これらを活用して在籍校及び協力校で実践を行った。対象児童の学習の様子や漢字の定着度,他の児童への効果を明らかにして指導プログラムや支援教具の有効性,活用のしやすさを検証した。3.研究成果:『指導プログラム』には,読みの先行学習,ゲーム感覚で楽しく学習に取り組む活動や体全体を使って漢字を表現する活動,スモールステップのプリント学習などが含まれている。支援教具は,『イラスト付き漢字カード』『漢字カードゲーム』『漢字のにんにん体操』『大型筆順パネル』など11種類を開発活用した。その結果,漢字を覚えることが難しかった児童は,漢字クイズやゲームに夢中になりながら漢字を繰り返し見て聞いて声に出して読むうちに,読みを確かにしていくことができた。また,イラスト付きカードの絵と文字を一緒にして覚えると記憶がスムーズで,「漢字が読めるよ。わかるよ。」と嬉しそうに言って,進んで読みの練習をするようになった。書くことが苦手な児童は,漢字のにんにん体操で書き順を確かめ,体操の歌を唱えながら体で覚える方法がお気に入りの学習になった。忍者になりきって「にんにん体操,よこぼう。」と大きな声を出して学習に参加していた。読みについては対象児全員がそれぞれの目標を達成できた。書きについては,正確に覚えていない文字がある児童もいるが,どの子も全く書けない漢字はなかった。担任からは,「指導の順番や方法が提案されていたので対象児に見通しを持って支援を行うことができた」「学習面で厳しい子どもにとっても無理なく漢字を覚えることができ自信につながった」などの感想があった。年度末の定着度テストでは,研究参加校(193名)の誤答率は読み2%書き4%に対して,他校(219名)は読み4%書き7%であった。読み書き全てにおいて研究参加校の正答率が高かったことからも,指導方法や指導の順序を具体的に示した指導プログラムとその際に活用した支援教具は有効であったと考える。4.今後課題:開発した支援プログラムや支援教具は,一斉指導でより活用しやすくなるよう改良すると共に,機会を捉えて本研究の成果を発表し,多くの教師との意見交換を行いたい。