- 出版者
- 鱗形屋
室町物語。異類婚姻譚。慈悲深い宰相右兵衛督は家を出て庵暮らしをしている時、猟師に捕らえられた鶴を黄金作りの刀と交換に助ける。翌日訪ねてきた美女と契りを結び、女の千両の持参金で豊かに暮らす。守護の宮崎が女を見染めて恋文を届けるが拒絶され、女を奪おうと軍勢で攻め寄せるが、女が扇で招き寄せた異類のものに撃退されて、改心し頓世する。女は右兵衛督を親の住む隠れ里に案内し歓待した後、庵に帰って後素生を明かし、生を変えて一緒になりたいと云って去る。三条内大臣が天に祈って姫君を儲ける。姫は生まれつき左腕が体に付いて離れなかったが、14歳の春に腕が上がり、下に和歌の下の句を書いた短冊が現れる。帝に奏上し調べると事情が判明し、姫と宰相は再会する。宰相は左大臣となり子孫繁盛した。版本に寛文2年婦屋仁兵衛版の3巻3冊本があるが、本書は鱗形屋刊の江戸版で師宣風の挿絵を持つ。(岡雅彦)