著者
斎藤 晃 宇賀 直樹 宇賀 直樹
出版者
鶴見大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

新生児期アテンションの指標であるNBAS敏活性が18ヶ月における認知課題解決と有意な関連性を示した。そして情動調節機能の指標であるアタッチメント行動が18ヶ月における認知課題解決と有意な関連性を示した。アタッチメント行動と認知課題解決との関連性は,B群児が認知課題を効果的に解決するという欧米の先行研究と一致する。また,脳波前頭部非対称性がアタッチメント行動と有意な関連性があることを示した。
著者
斎藤 晃 多田 裕
出版者
鶴見大学短期大学部
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

【目的】本研究の目的は早産児の行動特徴が生後1年間の母子相互交渉とアタッチメント形成に与える影響を検討することにある。母子相互交渉に特に影響を与える児側の要因として啼泣しやすさとなだまりやすさ等の情動反応が挙げられる。この特徴はブラゼルトン尺度(NBAS)と心拍変動分析によって予測することが可能である。心拍変動のスペクトル成分中,低周波成分は交感神経と副交感神経に,高周波成分は副交感神経によって変調を受けていることは既知の事実である(Akselrodら,1981)。【方法】被験児: 早産児の母親105名にNBASを依頼し,32名(男児18名の女児14名)の協力を得た。このうち,1年間の家庭訪問とアタッチメント実験の協力を得られたのが25名である。平均出生体重は1664.8g(SD512.16),平均在胎日数は224.1日(SD23.58)であった。手続き: (1)NBAS: 退院前1週間,退院後1週間,1,2,3ヶ月に1名の認定評価者がNBASを行った。(2)心拍変動: NBAS施行日と同一日で,児の深睡眠時に心拍変動の測定を行った。(3)母子相互交渉: 退院後1週間,1,2,3,6,9,12ヶ月に家庭訪問を行い,行動観察を行った。(4)アタッチメント実験: 退院後12〜13ヶ月に母子分離再会の実験を行った。【結果と考察】NBAS値をLester(1984)に従って素点変換し,これを児の行動特徴とした。ただし,慣れ群は欠損値が多いので分析から除外した。心拍変動値に対してはスペクトル分析の一種である自己回帰要素波分析を行い,3種類の周波数成分が抽出された。総パワー中に占めるこれら3周波数成分のパワー比を独立変数に,NBAS値を従属変数として重回帰分析を行った。交感神経によって変調される成分であるPWR1「なだめ」を有意に予測し,なだめやすさは単に副交感神経だけによるものではないことが示唆された。交感神経と副交感神経の働きを意味するPWR2は「状態向上迅速性」と「易刺激性」を有意に予測した。これは交感・副交感神経が優位な児は外部刺激が累積的に増大しても啼泣しづらいことを意味する。また,PWR3は「易刺激性」と「抱擁」を予測した。PWR3が高いほど,啼泣(ぐずりを含む)しやすく,かつ抱きづらいことを示している。これは交感神経が関与している可能性があり,高周波成分であっても単に副交感神経だけの作用とはいえないことを示唆した。児の新生児期の行動特徴であるNBAS項目と心拍変動値を独立変数とし,アタッチメント実験時における児の近接・接触維持,抵抗,回避,遠隔相互交渉の各行動を従属変数として重回帰分析を行った。その結果,CV-RRとPWR2両者の値が高いほど,再会時の近接・接触維持傾向が低く,回避傾向が高いことが示された。CV-RRは副交感神経系の活動を表す指標であり,PWR2は副交感神経の影響を大きく受けている領域である。実験時における児の行動は単に母子相互交渉だけではなく,児が新生児期の行動特徴にも影響を受けることが示された。