著者
若菜 宣明 中林 敦代 本間 和宏 大松 孝樹 平井 香織 田中 越郎
出版者
JAPAN HEALTH MEDICINE ASSOCIATION
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.44-48, 2007-07-31 (Released:2017-12-28)
参考文献数
19

ビルベリーは夜間視力を改善するといわれている。しかしいくつかの臨床試験が試みられているものの,はっきりした結果は出ていない。ブルーベリーはビルベリーと近縁の植物で,日本ではビルベリーとしばしば混同されている。従って多くの日本人はブルーベリーが視力改善に効果があると思っているが,ブルーベリーの眼機能に関する研究はほとんどなされていない。本研究ではブルーベリーが眼機能を改善するか否かを調べた。7人の健康成人に10gの乾燥ブルーベリーを摂取させ,4時間後に眼機能を評価した。暗順応時間,視野,流涙量(シルマー試験で評価),まばたき回数,自覚所見には改善は見られなかった。また,10人の健康成人に毎朝7gの乾燥ブルーベリーを21日間摂取させたところ,やはり暗順応時間,視野,流涙量,まはたき回数,自覚所見には改善は見られなかった。すなわち,今回の17人の被検者で調べた限りでは,一般的摂取量のブルーベリーでは明らかな眼機能改善効果は見い出せなかった。
著者
藤本 裕二
出版者
JAPAN HEALTH MEDICINE ASSOCIATION
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.407-413, 2020-01-31 (Released:2020-10-06)
参考文献数
20

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症者のリカバリーに影響する要因を明らかにすることである。調査項目のリカバリーは,24項目版 Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)を用いた。その影響要因を性別,年齢,病気体験により得られたこと,楽観性尺度(【前向きさ】【気楽さ】),日本語版Health Locus of Control(HLC),精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度(SECL),情緒的支援ネットワーク認知尺度,薬に対する構えの調査票(DAI-10)とした。地域で暮らす統合失調症者174名を対象にアンケート調査を実施し,調査票無効者17名を除く157名を分析対象とした。男性90名(57.3%),平均年齢(SD)は46.7(12.9)歳,病気体験により,自分自身が成長したり,特別な何かが得られたと感じたことがある人は115名(73.2%)であった。RAS合計平均得点(SD)は83.6(15.1)点であった。楽観性尺度の【前向きさ】平均得点(SD)は15.8(3.6)点,【気楽さ】平均得点(SD)15.3(4.7)点であった。HLC合計平均得点(SD)は39.5(5.1)点,SECL合計平均得点(SD)132.7(29.3)点,情緒的支援ネットワーク認知尺度合計平均得点(SD)7.0(3.0)点,DAI-10合計平均得点(SD)3.9(4.4)点であった。リカバリーの影響要因を検討するため,RASを従属変数,分析モデルの全9項目を独立変数として重回帰分析(Stepwise法)を行った。その結果,「SECL」,「楽観性尺度【前向きさ】」,「楽観性尺度【気楽さ】」,「病気体験により得られたこと」の4つがリカバリーに有意な影響力を持つ変数として採択され,自由度調整済みR2は0.65であった。自己効力感が高い人は,あらゆる物事に対して自信を持って取り組むことができ,肯定的な将来展望を持っていることがリカバリーの高さに繋がっていることが考えられる。また,楽観性の【前向きさ】は,新たな人生を切り開く原動力となり,リカバリーに良い影響を及ぼしていると思われる。【気楽さ】は,心や気持ちに余裕をもたらし,自分らしい人生や生活の見出しやすさに繋がっていることが考えられる。さらに,リカバリーには,病気を自分の人生の中で意味ある体験と認識することが重要であることが示唆された。