著者
藤野 裕子 樋口 裕也 藤本 裕二 立石 憲彦
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.319-327, 2019-01-31 (Released:2019-08-01)
参考文献数
35

精神科看護師のリカバリー志向性の特徴と関連要因を明らかにすることを目的として,2つの精神科病院に勤務する看護師455名を対象に自記式質問紙調査を実施した。調査項目は,1)基本的属性,2)リカバリー志向性(日本語版7項目版Recovery Attitudes Questionnaire:RAQ-7),3)リカバリー知識(日本語版Recovery Knowledge Inventory:RKI),4)リカバリーの認識,5)リカバリーへの関心,6)研修姿勢,7)リカバリー研修経験,8)リカバリープロセスにある精神障害者を知っている人数,9)リカバリー概念に基づいた支援経験の有無,10)楽観性(前向きさ・気楽さの2因子で構成される楽観性尺度を使用)である。調査対象者中,有効な回答を寄せた315名(有効回答率69.2%)の回答を分析した。分析対象者は,女性が55.8%,男性が44.2%であり,年齢(平均値±標準偏差)は40.4±9.8歳,看護師経験年数は16.9±10.0年,精神科経験年数は13.1±9.1年であった。RAQ-7合計点は27.2±2.7点,項目点ごとに集計した場合は「精神の病気からのリカバリーのしかたは,人によって異なる」が4.3±0.6点で最も高く,「重い精神の病気をもつ人は誰でも,リカバリーするために励むことができる」が3.3±0.9点で最も低かった。リカバリーの認識を有していたのは198名であり,この中でリカバリー概念に基づいた支援経験者は12名(分析対象者の3.8%,認識のある者の6.1%)に過ぎなかったが,精神科専門職全般を対象とした先行研究よりもRAQ-7得点が高かったことから,患者の社会復帰を傍で支える看護師の姿勢が,リカバリー志向性の高さに繋がっていると考えられた。RAQ-7は,リカバリー支援経験者,研修に積極的な人,リカバリーに関心がある人,リカバリーに関して知らなかった人よりよく知っていた人において高かった。RAQ-7は,RKIとは関連がなく,前向きな楽観性とは弱い正の相関(r=0.194)がみられた。以上より,看護師は,回復において個別性を重視しながらも悲観的に捉えやすいため,リカバリーに関する教育が必要であると考えた。また,看護師のリカバリー志向性を高めるには,意欲的に学習に取り組む姿勢の育成,リカバリー概念の理解の推進,前向きな楽観性の考慮や実践的なプログラムを取り入れた教育が重要だと考えた。
著者
藤本 裕二
出版者
JAPAN HEALTH MEDICINE ASSOCIATION
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.407-413, 2020-01-31 (Released:2020-10-06)
参考文献数
20

本研究の目的は,地域で生活する統合失調症者のリカバリーに影響する要因を明らかにすることである。調査項目のリカバリーは,24項目版 Recovery Assessment Scale日本語版(RAS)を用いた。その影響要因を性別,年齢,病気体験により得られたこと,楽観性尺度(【前向きさ】【気楽さ】),日本語版Health Locus of Control(HLC),精神障害者の地域生活に対する自己効力感尺度(SECL),情緒的支援ネットワーク認知尺度,薬に対する構えの調査票(DAI-10)とした。地域で暮らす統合失調症者174名を対象にアンケート調査を実施し,調査票無効者17名を除く157名を分析対象とした。男性90名(57.3%),平均年齢(SD)は46.7(12.9)歳,病気体験により,自分自身が成長したり,特別な何かが得られたと感じたことがある人は115名(73.2%)であった。RAS合計平均得点(SD)は83.6(15.1)点であった。楽観性尺度の【前向きさ】平均得点(SD)は15.8(3.6)点,【気楽さ】平均得点(SD)15.3(4.7)点であった。HLC合計平均得点(SD)は39.5(5.1)点,SECL合計平均得点(SD)132.7(29.3)点,情緒的支援ネットワーク認知尺度合計平均得点(SD)7.0(3.0)点,DAI-10合計平均得点(SD)3.9(4.4)点であった。リカバリーの影響要因を検討するため,RASを従属変数,分析モデルの全9項目を独立変数として重回帰分析(Stepwise法)を行った。その結果,「SECL」,「楽観性尺度【前向きさ】」,「楽観性尺度【気楽さ】」,「病気体験により得られたこと」の4つがリカバリーに有意な影響力を持つ変数として採択され,自由度調整済みR2は0.65であった。自己効力感が高い人は,あらゆる物事に対して自信を持って取り組むことができ,肯定的な将来展望を持っていることがリカバリーの高さに繋がっていることが考えられる。また,楽観性の【前向きさ】は,新たな人生を切り開く原動力となり,リカバリーに良い影響を及ぼしていると思われる。【気楽さ】は,心や気持ちに余裕をもたらし,自分らしい人生や生活の見出しやすさに繋がっていることが考えられる。さらに,リカバリーには,病気を自分の人生の中で意味ある体験と認識することが重要であることが示唆された。
著者
鎌田 ゆき 藤野 成美 古野 貴臣 藤本 裕二
出版者
日本精神保健看護学会
雑誌
日本精神保健看護学会誌 (ISSN:09180621)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.70-79, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
23

本研究の目的は,多職種チームにおける精神障がい者アウトリーチ実践自己評価尺度を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである.医療・福祉の専門職を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施し,199データを対象として分析を行った.探索的因子分析の結果,【多職種チーム内における支援計画の遂行】【対象者の生活機能の把握】【対象者のリカバリーに向けた支援】の3因子20項目構造となった.本尺度は,検証的因子分析において許容できるモデル適合度であり,基準関連妥当性において有意な相関がみられた.Cronbachのα係数は許容範囲であり,内的整合性を確認した.よって,本尺度における信頼性・妥当性は,統計学的に許容できる尺度であると示唆された.