著者
大久保 力廣 鎌田 奈都子 長田 秀和 新保 秀仁 栗原 大介 小久保 裕司 菊地 亮
出版者
Japanese Society of Oral Implantology
雑誌
日本口腔インプラント学会誌 = Journal of Japanese Society of Oral Implantology (ISSN:09146695)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.42-47, 2010-03-31
参考文献数
7

目的:インプラント用従来型既成マグネットアタッチメントのキーパー吸着面はインプラント長軸と垂直に設定されている.したがって,もしインプラントが傾斜埋入された場合には,キーパー面は咬合平面と垂直とならない.このような場合にキーパーは大きなアンダーカットを生じることになり,維持力も減少してしまう.本試作キーパーはインプラント上のアングルアバットメントに接続するように設計開発された.また,角度補正型マグネットアタッチメントの吸引力を従来型のものと比較した.<br/>方法:マルチユニットアバットメント(Replace RP, Nobel Biocare, Sweden)に適合するように,試作キーパー(直径4.8mm,高さ3mm)をステンレス合金(72.0%Fe-26.0%Cr-2%others)より切削加工して製作した.試作キーパーは17度あるいは30度の角度付きマルチユニットアバットメントにスクリュー固定により接続した.比較試料としてPhysio Magnetキーパー#40(日立金属)を用いた.磁石構造体としてPhysio Magnet #40を両キーパーに装着し,デジタルフォースゲージ(Nidec-shimpo Corp)を装備した引張試験機に取り付けた.キーパーから磁石構造体が離脱するときの最大荷重量を吸引力(N)として測定した.測定値はt検定により危険率5%で統計解析を行った.<br/>結果:インプラントオーバーデンチャー用として,試作キーパーは容易に角度付きアバットメント上にスクリュー固定できた.試作キーパーと従来型キーパーとの吸引力を比較したところ,両者に有意差は認められなかった(<i>p</i>>0.05).<br/>結論:試作キーパーの吸引力は市販の従来型マグネットキーパーとほぼ同等であった.開発したキーパーは十分な維持力を有し,インプラントオーバーデンチャーのための適切な支台装置として使用できることが示唆された.