著者
山田 晴美 久住 眞理 吉田 浩子 大東 俊一 青木 清
出版者
The Japan Society of Health Sciences of Mind and Body
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.26-36, 2013

【目的】東日本大震災の災害支援活動を行った保健師の心身の状態について,心身健康科学の視点から解析し,派遣時のサポートについて考察することを目的とした.<br>【方法】X県から被災地に派遣された保健師32人を対象に,心身の健康状況,派遣中及び派遣後の職業性ストレス,メンタルへルス対策の状況について調査を行った.<br>【結果】質問紙回答者 (n= 26) の約6割が派遣中に睡眠の問題や緊張感を,約7割が派遣終了後に心身の不調を感じたと回答した.派遣された保健師にとって,ストレスの要因は「被災の話を聴く」「被災者のストレスを受け止める」ことであった.派遣時期や労働環境もストレス反応に影響を及ぼしていた.<br>【結論】支援者である保健師は,災害支援活動中の二次受傷が自らの健康に影響を及ぼす可能性があることを自覚し,セルフケアを行うことが大切であった.通常業務時以上に,仲間・上司等との語りやサポート体制が必要とされることがわかった.
著者
宮城 眞理 豊里 竹彦 小林 修平 川口 毅
出版者
The Japan Society of Health Sciences of Mind and Body
雑誌
心身健康科学 (ISSN:18826881)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.91-99, 2012

本研究は禁煙外来に来訪した受診者を1年以上にわたって追跡調査し,禁煙継続に関わる諸因子を疫学的に明らかにすることを目的とした.特に近年,喫煙が薬物依存症であることが明らかにされ,それに基づいて開発されたニコチン製剤であるニコチンパッチ (二コチネル) および,ニコチン受容体部分作動薬バレニクリン (チャンピックス) を用いた禁煙治療の長期的効果の比較とその他の心身健康に関わる心理的因子の検討を行った.<br>都内の禁煙外来においてバレニクリンもしくはニコチンパッチを用いて治療した102名を対象に治療開始後3ヶ月,1年後に追跡調査した結果,3ヶ月,1年後それぞれの禁煙率は79.3%,62.6%であり,禁煙補助剤別でみるとバレニクリンでは80.0%,68.4%,ニコチンパッチでは77.8%,56.7%であった.禁煙補助剤による副作用は53%にみられ,禁煙補助剤別でみるとバレニクリンでは57%,ニコチンパッチ42%であった.<br>禁煙の持続率に関連すると思われる因子では,禁煙持続群と禁煙しようとしたが,禁煙できなかった喫煙群との間には禁煙外来への受診回数 (3ヶ月<i>p</i> < 0.05,1年<i>p</i> < 0.01) および心理的要因であるSTAI (特定不安) ならびにカウンセリング必要度に有意差がみられ (<i>p</i> < 0.05),さらにカウンセリング必要度の中では,理屈ではよくないとわかっているのにその行動を改められないなどの行動症状,わけのわからないことで,イライラしたり,不安になる,あるいは無気力になるなどの精神症状に有意差が認められた (<i>p</i> < 0.05).<br>以上の結果から,長期的な禁煙効果を高めるためには,受診継続への工夫,禁煙補助剤の開発,ならびに心理的なサポートをするカウンセラーの育成が急務であることが示唆された.