著者
加納 光樹 横尾 俊博 河野 博
出版者
The Japanese-French Oceanographic Society
雑誌
La mer (ISSN:05031540)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1-2, pp.1-10, 2018 (Released:2021-05-19)

2003 年6 月上旬に多摩川河口干潟域(河口から0-4 km)のタイドプール55 か所(面積0.6-6.4 m²)で,魚類群集の空間的な変動を調査した。調査期間中に2 科11 種計1,838 個体が採集された。採集個体は体長50 mm 以下で,大半がハゼ科の稚魚と成魚であった。採集個体数が最も多かったのはマハゼで全採集個体数の52.2% を占め,次いで,マサゴハゼ(24.6%),エドハゼ(12.7%),ビリンゴ(7.0%),ボラ(1.0%),ヒメハゼ(0.9%),アベハゼ(0.7%),ヒモハゼ(0.5%)であった。これらのうち,ビリンゴとボラを除く底生性ハゼ類6 種の生息密度は,河口域上部,中部,下部の間で異なっていた。各タイドプールにおける優占種の密度に基づく正準相関分析によって,魚類群集構造の時空間的変動は,アナジャコ類巣穴の密度,底質の中央粒径,塩分,干潮時の汀線からの高さ,水温,プール面積,水深とよく関連付けられることが明らかとなった。