著者
小熊 進之介 丸山 啓太 澤井 伶 中野 航平 河野 博
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 = Journal of the Tokyo University of Marine Science and Technology
巻号頁・発行日
vol.18, pp.1-19, 2022-02-28

2018年4月から2019年11月に千葉県新浜湖において小型地曳網と張網を用いて採集したニクハゼの出現様式,機能発育,および食性を調査し,干潟域におけるニクハゼの初期生活史を明らかにした.本研究では853個体のニクハゼが採集された.発育段階は,遊泳関連形質に基づくと4段階,摂餌関連形質に基づくと3段階に分けられた.消化管内容物調査の結果,体長13 mm未満の個体は浮遊性カイアシ類,体長13.0–23.9 mmでは浮遊性カイアシ類と多毛類,体長24.0 mm以上では様々な動物プランクトンやチチブ属の仔魚を主に摂餌することが明らかになった.また,岸側と沖側で採集されたニクハゼの個体数の違いから,新浜湖の干潟域では仔魚は岸側で成育し,成長に伴って岸側に加えて沖側も利用することが明らかになった.さらに,本種は東京湾内湾の干潟域の中では高塩分環境を好むと考えられた
著者
加納 光樹 小池 哲 河野 博
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.115-129, 2000-11-27 (Released:2010-06-28)
参考文献数
44
被引用文献数
9

A total of 61, 388 fish specimens, representing about 60 species, were collected by monthly seine-net (mesh size 0.8 mm) samplings at the seven tidelands in the inner Tokyo Bay, Pacific coast of central Japan, from April 1997 to March 1998. Two gobiid species, Acanthogobius flavimanus and Chaenogobius macrognathos, were the most abundant species, contributing 52.6 and 20.7% of the total number of fishes, followed by Chaenogobius castaneus (7.7%), Lateolabrax japonicus (6.3%) and Mugil cephalus cephalus (6.0%). Eight “estuarine” and 19 “marine” species, which occupying 99.4% of total number of fishes, were highly possibly c0onsidered to depend on tidelands for their considerable part of life history, because of the occurrence of some developmental stages. The diversity of fish community was higher in Obitsu River and Edo River than in other five sites, in the first two rivers, large tidelands having remained in spite of coastal construction since 1950's. The results of this study would indicate that the diversity of fish community at tidelands reflect more or less an impact of emvironmental changes by the reclamation of the inner Tokyo Bay.
著者
河野 博
出版者
The Ichthyological Society of Japan
雑誌
魚類学雑誌 (ISSN:00215090)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.268-286, 1984-11-20 (Released:2010-06-28)
参考文献数
50

ウロコマグロの骨格系を記載した. それに基づいて, スズキ目に属する9科との比較を行い, ウロコマグロの系統的位置を考察した.ウロコマグロはサバ科魚類の特徴とみなされた13形質のうち12形質を保有していた.これに対して, サバ科以外のスズキ目魚類では, ウロコマグロとだけ共有されている形質はシイラ科の節骨以外に見出すことはできなかった.さらに, ウロコマグロには15の特異な形質が認められた.これらの形質は主に頭部に集中しており, これらの形質に基づいて単一の科を提唱することは本質的ではないと判断した. 以上のことから, ウロコマグロはサバ科に属すると結論した.ウロコマグロと他のサバ科魚類を比較すると, ウロゴマグロにはサバ科の原始的・派生的形質がモザイク状に分布していることが判明した. 先に述べた15の特異形質とサバ科魚類の形質状態がモザイク状に分布していることから, ウロコマグロは早い時期にサバ科の主幹から分化して独自の特化方向へむかったものと推論した.
著者
高橋 威一郎 高瀬 勝教 竹下 佳代子 河野 博幸 馬見塚 守 岐津 英明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.51-62, 2016 (Released:2016-03-10)
参考文献数
23
被引用文献数
6

大分県の芹川ダムにおいて, 平成26年10月に2-メチルイソボルネオール (MIB) が高濃度化し, 本ダムの下流の表流水を水道水源とする大分市では大規模なかび臭障害が発生した。原因はダム湖内でのかび臭物質産生藍藻 (かび臭藍藻) の増殖であり, 遺伝子配列解析及びMIB産生能評価の結果, Pseudanabaena limnetica及びPseudanabaena galeataと推定された。11月中旬のダム湖秋季循環期到来以降, 湖内のかび臭藍藻やMIBは急激に低減し, 微生物群集構造解析の結果, 湖水循環前後での群集構造の変化が認められ, 細菌による生物分解の関与が示唆された。かび臭藍藻は水温が10 ℃以下の低水温環境でも生息し続け, MIB産生能もわずかに有し, 15 ℃以上となると活発な増殖と高いMIB産生能を示した。また, かび臭藍藻の溶藻やMIBの分解等の生物分解の発現にも至適温度があることが示唆された。
著者
加納 光樹 横尾 俊博 河野 博
出版者
The Japanese-French Oceanographic Society
雑誌
La mer (ISSN:05031540)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1-2, pp.1-10, 2018 (Released:2021-05-19)

2003 年6 月上旬に多摩川河口干潟域(河口から0-4 km)のタイドプール55 か所(面積0.6-6.4 m²)で,魚類群集の空間的な変動を調査した。調査期間中に2 科11 種計1,838 個体が採集された。採集個体は体長50 mm 以下で,大半がハゼ科の稚魚と成魚であった。採集個体数が最も多かったのはマハゼで全採集個体数の52.2% を占め,次いで,マサゴハゼ(24.6%),エドハゼ(12.7%),ビリンゴ(7.0%),ボラ(1.0%),ヒメハゼ(0.9%),アベハゼ(0.7%),ヒモハゼ(0.5%)であった。これらのうち,ビリンゴとボラを除く底生性ハゼ類6 種の生息密度は,河口域上部,中部,下部の間で異なっていた。各タイドプールにおける優占種の密度に基づく正準相関分析によって,魚類群集構造の時空間的変動は,アナジャコ類巣穴の密度,底質の中央粒径,塩分,干潮時の汀線からの高さ,水温,プール面積,水深とよく関連付けられることが明らかとなった。
著者
岡 奈理子 土屋 光太郎 河野 博 菊池 知彦 丸山 隆
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 = Japanese journal of ornithology (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.52-56, 2013-04-23

伊豆諸島鳥島(北緯30°29′02″東経140°18′11″)で,2000年5月中旬,巣立ち期に近いクロアシアホウドリ<i>Phoebastria nigripes</i>(Audubon 1849)のヒナが吐出した胃内容物を採取し同定した.4羽すべてが中深層性の遊泳動物を吐出した.このうちイカ類はアカイカ科トビイカ属トビイカ<i>Sthenoteuthis oualaniensis</i>,ダイオウイカ科ダイオウイカ属,サメハダホオズキイカ科オオホオズキイカ属,ユウレイイカ科ユウレイイカ属,魚類はクロボウズギス科,エビ類はヒオドシエビ科アタマエビ属アタマエビ<i>Notostomus japonicus</i>の成体であった.クロボウズギス科はクロアシアホウドリの胃内容物から初めて出現した.クロアシアホウドリの親鳥自らがこれらの中深層性の遊泳動物を自力で捕獲したとみるより,人間活動により投棄されたり,餌動物自らが潜水遊泳に長けた高次捕食者の採食活動や他の理由で死んで浮上したものを,採食した可能性が高いと考えられた.クロアシアホウドリが本来は採食機会がない中深層性の遊泳動物を採食していたことは,彼らが海洋のスカベンジャー,もしくは人間活動や他の高次捕食者の採食活動などに依存した採食ニッチを持つことを示す.
著者
酒井 洋一 茂木 正人 河野 博 サカイ ヨウイチ モテキ マサト コウノ ヒロシ
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 (ISSN:18800912)
巻号頁・発行日
no.3, pp.45-50, 2007-03

東京湾の湾奥部(東京湾に面している城南島と運河内の係船場、ともに垂直護岸)で、1993年5月~1994年9月に灯下に蝟集する魚類の採集を行った。城南島と係船場では、それぞれ32種2,048個体および17種2,392個体が採集された。城南島ではハゼ科魚類が12種出現し、個体数で86%を占めた。係船場では、マハゼ(全個体数の78%)、カタクチイワシ(12%)およびドロメ(3%)が優先した。両地点において、個体数、種数ともに3月から6月にかけて多かったが、8月から12月まで(城南島では1月まで)魚類はほとんど採集されなかった。城南島では多くの種(23種、77%)が短期間(1年間のうち2か月以内)のみ出現し、係船場では短期間出現した種は7種(50%)であった。垂直護岸や運河周辺では、特に8~10月頃には、貧酸素により魚類の生息は困難と考えられるが、ハゼ科魚類を始めとする底生性魚類にとって、城南島と係船場はそれぞれ短期および長期的な生育場となっている。
著者
河野 博臣
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.115-123, 1979-04-01 (Released:2017-08-01)

The Sandplay Technique is carried out by having the patients do the sandplay. It was created by M. Lowenfeld, as a method of psychological treatment for children. D. Kalffe, started using it for adults by combining it with the analytical psychology of C. G. Jung. Kawai received training and supervison from her and started introducing the Sandplay Technique in Japan. The author learned it from Kawai and found that the sandplay technique was effective as a psychotherapeutic approach to psychosomatic diseases. Main characteristics can be summarized as follows. 1. You can not proceed it without the patient trust in the therapist. Not everybody can get better, just because he does the sandplay. 2. By touching the sand, the patient regresses into infancy. This can provide him with favorable treatment condition. 3. In case of neurosis, as emotional expression is facilitated readily and abundantly, this approach can be a good indication. 4. Even for the psychosomatic patients with alexithymic tendencies, good therapeutic result can be expected as it appeals to the patient's emotion directly with the use of the sand and no words. 5. It can cover a variety of patients ranging from children to old people. By now, we have found it useful for neuroses, peptic and duodenal ulcers and the irritable colon syndrome. 6. As the indispensable factor, it requires the trust between therapist and patient which is, needless to say, basic for every psychotherapy. Also, good results can be expected when it is combined with other approaches, such as A. T. and T. A. 7. If the patient gets to unconscious contents and can not integrate his mind and body, as might happen in schizophrenia or compulsive neurosis, caution must be taken by the therapist. 8. The most important point is that the therapist selects a right kind of objects for treatment.
著者
神田 穣太 河野 博 川辺 みどり 工藤 貴史 鈴木 清一
出版者
江戸前ESD協議会
雑誌
江戸前の海学びの環づくり瓦版
巻号頁・発行日
no.5, pp.1-8, 2008-11-15

「水が汚いってどういうこと?」~きれいで汚く豊かで貧しい東京湾~ / 神田穣太
著者
富永 隆治 吉利 用和 麻生 俊英 益田 宗孝 河野 博之 木下 和孝 川内 義人 田中 二郎 徳永 皓一
出版者
JAPANESE SOCIETY FOR ARTIFICIAL ORGANS
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.19-22, 1987

症例は65才男性。心筋梗塞発症9時間後に心室中隔穿孔を併発、ショック状態に陥いる。このため昭和60年10月7日、緊急手術を施行した。中隔穿孔部パッチ閉鎖、自由壁梗塞部切除、パッチ形成術を施行。再灌流後、心拍動微弱で人工心肺よりの離脱は全く不可能と判断、LVADポンプを縫着(右側左房、上行大動脈)、PBP駆動装置に接続した。LVAD装置により人工心肺よりの離脱は容易であった。PBP駆動装置は58時間使用、この間心電図トリガーミスがあり、LVADが一時停止、back up機構の必要性を痛感したが、LVAD作動そのものは良好で充分使用可能であった。術後16日目にLVADを除去したが両心不全、感染、多臓器不全にて失った。剖検では、LVAD systemに血栓を認めなかったが、ヘパリン使用に関わらず左室内パッチを中心に多量の血栓形成を認め、より厳重な抗凝固療法を要すると考えられた。
著者
河野 博行 岡田 裕之 平岡 佐規子 田中 健大
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.112, no.7, pp.1326-1333, 2015-07-05 (Released:2015-07-05)
参考文献数
29

症例は67歳女性.61歳時小腸大腸型クローン病と診断.生物学的製剤(Adalimumab)にて寛解維持状態であった.67歳時に空咳が出現.胸部CTで両側下葉に間質影を認めた.血液検査でSS-A, B抗体陽性,唾液腺生検でリンパ球浸潤を認めたが,乾燥症状は認められず無症候性シェーグレン症候群と診断した.感染や薬剤性の肺障害は否定的で,間質性肺炎はシェーグレン症候群の腺外病変であると考えられた.
著者
吉利 用和 川内 義人 富永 隆治 木下 和彦 河野 博之 田中 二郎 徳永 皓一
出版者
一般社団法人 日本人工臓器学会
雑誌
人工臓器 (ISSN:03000818)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.263-267, 1987

Hancock弁置換219例の遠隔期におけるprirnary tissue failure (PTF)について検討した。追跡期間は1327 patient-years (平均6.4年), 遠隔死は35例, 2.600/P-Yであった。PTF 19例中18例に, 初回手術後平均7.1年で再手術が施行され(死亡率11.1%), 置換部位はM弁16個, A弁2個, T弁1個であった。PTF free rateは8, 9, 10, 11年目で90, 81, 76, 55%であり, 9年目を境に急激な減少を示した。手術時年令50才未満に16例(1.6%/P-Y), 50才以上に3例(0.9%/P-Y)PTFが発生し, 若年者に発生し易い傾向を認めた。摘出弁所見では, tissue over ingrowth2例, fibrocalcific obstruction 2例, 石灰沈着を伴う弁硬化2例の計6例が弁開放不全を呈し, 残り13例が弁尖断裂, 穿孔による弁逆流不全を示した。術後9年を境にHancock弁の耐久性の限界が示唆されたが, PTFの機序に関しては今後の観察が必要である。
著者
河野 博 植原 望
出版者
東京海洋大学
雑誌
東京海洋大学研究報告 = Journal of the Tokyo University of Marine Science and Technology (ISSN:21890951)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.16-35, 2017-02-28

The fish transparent specimens were applied to a study of the evolution through the observation of jaw arches of the cartilaginous and bony fishes, and its effectiveness was investigated by the pre- and post- intervention questionnaire. The research examined 48 participants in the four learning interventions, the age ranging from 13 to 76 with a mean of 29.9 years old( n=47, because one articipant did not describe the age)and the sex ratio being 27 females and 21 males. The program was composed of the followings: how to use the microscope; the basic knowledge of bones such as the kinds of bone, how to make specimens for bone observation, history and methods to make transparent specimens; main observation 1, jaw arches of cartilaginous and bony fi shes; and main observation 2, relationships between fi sh jaws and our auditory ossicles, known as the Theory of Reichert. The participants were significantly more concerned about the evolution of fish jaws to our auditory ossicles after the intervention, indicating that the transparent specimens and observation objects related to the Theory of Reichert would be suitable for the study of evolution. The picturesque transparent specimens attracting the participants would be a good resource of science education.透明骨格二重染色標本が、理科教育、とくに進化の理解を深めるための教材として有効かどうかを、事前と事後のアンケートにもとづいて調査した。対象としたのは、4 つのイベントに参加した13歳から76歳の男性21名、女性27名、計48名である。プログラムは、顕微鏡の使い方と透明標本の基礎知識(骨の種類、骨格を観察するための方法、透明標本の作製方法と歴史)、および二つからなる主題の観察(サメの顎と魚の顎、および私たちとの関係[ライヘルト説])の順に進めた。アンケートによって、ほぼ全員が、透明標本を観察することによって魚類の顎の骨格と私たちの中耳骨との関係であるライヘルト説を理解したことが判明した。さらに自由記述では、進化自体の驚きや魚と私たちの系統関係、さらには透明標本の美しさに興味津々であることがうかがえた。
著者
吉澤 中條 秀彦 秋葉 直樹 河野 博一 辻村 健一 長島 均 村杉 順一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
信学技報
巻号頁・発行日
pp.7-12, 1993
被引用文献数
7

コンピュータ用ディジタル磁気記録では主としてピーク位相弁別が用いられ、その高密度化の限界はピークシフトで決まる。VTR用は振幅弁別でその限界はS, N比による。いずれにせよ劣化の主原因はビット間干渉でそれを固定閾値でビット毎弁別しているための限界である。干渉を補正する波形等化やビタビ復号法等があるが、干渉は前後数ビット以上に及びアルゴリズムは複雑で多数ビットの干渉補正は難しい。一方ニューロは複雑なアルゴリズムでもプログラムなしで解を見つける能力を持ち、再生波形を数ビットのパターンとしてニューロに学習、認識させたら従来の限界を越えて高密度弁別能力を持つ可能性がある。この方法の模擬実験を試みた。