- 著者
-
岩田 和彦
小林 哲則
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
- 巻号頁・発行日
- vol.J106-D, no.1, pp.57-65, 2023-01-01
多様な音声表現が可能な対話音声合成の構築を目的として,複数の異なる音声表現を収集する手法の設計に取り組んだ.従来は,それぞれを適切な表現とすることに注意が向けられ,互いに他の表現とは無関係に表出させた音声が収集されていた.しかし,このような収集方法を採ると,それぞれの表現の隔たりが大きくなり,それらの合成音声を対話の流れの中で発話ごとに使い分けたときに違和感が生じるという問題が起こる.そこで,話し手の心的状態が次々と変化して,収集したい音声表現が満遍なく出現するように進行する対話シナリオを導入した収集手法を設計した.所望の音声表現を対話の流れの中で順に表出させることで,全体としての調和が保たれた表現となることが期待できる.実際に,対話の状況に応じて異なる複数の音声表現を収集し,これらと従来の方法で収集した音声表現とに基づく合成音声を用いたそれぞれの模擬対話の対比較による主観評価を行った.本手法で収集した音声表現の合成音声では,異なる表現を対話の流れの中で使い分けたときの自然性が改善されていることが示され,本手法の有効性が確認された.