- 著者
-
中島 淳
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
- 巻号頁・発行日
- vol.J106-D, no.5, pp.308-316, 2023-05-01
ブロックチェーン(BC)の一形態として,特定組織間でBCネットワークを形成するパーミッション型BCが有望技術として注目されている.パーミッション型BCでデータを共有する際,組織の一部に対してデータを見せたくないケースが存在する.パーミッション型BCでは,BCサーバを保有してBCサービスを構築・運用する組織(Own型組織)と,BCサーバを保有せず,API経由等で情報格納サービスとしてBCを利用する組織(Join型組織)が存在する.パーミッション型BCはJoin型組織向けにはデータ秘匿機能を提供しておらず,Join型組織は秘匿したいデータをOwn型組織に預けることになり,安心・安全にBCサービスを利用できない課題が生じる.本研究では,BCサーバ単位のデータ共有範囲制御によって各BCサーバにプライベート領域を用意し,秘密分散を用いて分解したBCへの格納データの断片をプライベート領域にそれぞれ格納することで,データを秘匿可能にする手法を提案・検証する.検証ではBCへの物流取引データ格納に本手法を適用した結果,Join型組織向けのデータ秘匿機能を,性能低下率1%未満で提供可能であることを示した.