著者
住谷 正夫 安久 正紘
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.J80-D2, no.9, pp.2556-2564, 1997-09-25

K. L展開の手法を用いて,安静状態,音楽聴取時のリラックスした状態と不快な音(雑音等)による心理的ストレス負荷状態での脳波を,音刺激開始後の約2分間のα波の変化に着目して短時間での快・不快の解析を試みている.頭皮上の16箇所から同時測定された脳波のα波帯域(8~13Hz)の脳波をK. L展開を用いて16軸の固有ベクトルに分解し,それぞれのベクトル方向とその固有値の寄与率の変化について検討している.その結果,固有値の大きい三つの固有ベクトルの寄与率の合計が全体の96%程度を示し,寄与率の大きな順に並べた第1ベクトルから第3ベクトルが,各被験者で,安静状態やさまざまな音刺激状態にかかわらず安定しており,各被験者の脳波パターンを表現する座標系として有効であることを見出している.次に,第1ベクトルの方向の違いを用いてA,Bの二つのグループに分けて,各刺激による各固有値の寄与率の変化を解析した.その結果,Bのグループで音楽を聞かせた状態において,不快な音刺激に比べ第1ベクトルの固有値の寄与率が有意に減少し,第2ベクトルの固有値の寄与率が有意に増大することを見出している.更に,第1ベクトルと第2ベクトルの寄与率の差によって,心理的ストレス状態の違いをより大きな有意な変化としてとらえることができることを示している.また,被験者全員の解析においても有意な差として同じ結果になることを見出している.更に,Aグループでも同じような傾向があることを見出している.

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