- 著者
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水科 晴樹
阪本 清美
金子 寛彦
- 出版者
- The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
- 雑誌
- 電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
- 巻号頁・発行日
- vol.J94-D, no.10, pp.1640-1651, 2011-10-01
機器使用時のユーザの心理的ストレスを客観的に評価するために,心拍や皮膚導電率等の生体信号を用いる手法が提案されている.しかしそれらの手法には電極の装着等の煩わしさが伴うため,それ自体がストレスの原因となる可能性もある.その点において,眼球運動は非接触で計測可能であるため,ストレスの優れた指標になり得ると考えられる.本論文はそのための基礎的な知見を得ることを目的とし,多様な課題の遂行時における眼球運動を計測した.また,そのときの心理状態の主観評価も併せて行い,眼球運動の特性との対応を検討した.その結果,課題によって時間的な切迫感を与えた場合に,振幅の小さいサッカード眼球運動の分布における振幅の平均値と主観的な「焦り感」との間に正の相関が見られた.このことから,サッカード眼球運動の動特性が心理的ストレスの指標として利用できる可能性が示された.一方,課題の遂行に関連すると考えられる振幅の大きなサッカードの分布においては,眼球運動の動特性と心理状態との間に相関は見られなかった.このことから,心理状態は課題の遂行に関連しない振幅の小さい眼球運動により強く反映されると考えられる.