- 著者
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後山 尚久
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.1029-1032, 2000-08-10
はじめに 経腟分娩において,麻酔を行って陣痛の痛みを和らげるものをわが国では無痛分娩あるいは和痛分娩と呼んでいる.この目的は,元来分娩時の強い陣痛による母体の苦痛(精神的,肉体的)を取り除くことにあるが,同時に母児双方に悪影響がなく,順調に起こっている陣痛を損なわないことが要求される.したがって,全身への作用の強い薬剤による全身麻酔や神経ブロックなどの局所麻酔剤の使用は,常に母児の状態を慎重に観察しながら行わなければならない. ハリ(鍼)麻酔が中国で普及しはじめて現在で40年ほど経過したが,産婦人科領域でも分娩,帝王切開,人工妊娠中絶術における麻酔や鎮痛の手段として試みられてきた.西洋でもTENS(trans—cutaneous electrical nerve stimulation:経皮電流刺激)による鎮痛が試みられており,鍼や灸と同様の理論基盤を持つ.本稿では,これらの麻酔薬を用いない減痛手段の分娩への応用について概説する.