著者
高守 正治
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.63, no.7, pp.635-640, 2011-07-01

序 神経筋接合部の正常な情報伝達は,神経側のアセチルコリン(acetylcholine:ACh)包含シナプス小胞がdocking,primingのあと融合(開口)するactive zoneと,筋肉側の後シナプス膜上で神経側からの情報を有効に受容すべく群落を形成するアセチルコリン受容体(ACh receptor:AChR)が約50nmのシナプス間げきをはさんでいかに対応するか,その遺伝子制御と分子生物学的構造・機能の様態にかかっている1,2)。この接合部の臨床病態には免疫疾患としての前シナプス病のLambert-Eaton筋無力症候群(Lambert-Eaton myasthenic syndrome:LEMS)と後シナプス病の重症筋無力症(myasthenia gravis:MG),遺伝子疾患としての先天性筋無力症候群がある。 LEMSでは,神経終末P/Q型電位依存性カルシウムチャネル(そのlamininβ2との結合はactive zoneの前シナプス膜面固定に関与4))に対する抗体(特に分子構造上ドメインⅢ,Ⅳ S5~S6リンカー領域を認識,その人工抗原で動物モデル作出可能)が主役を演ずる5-8,10-12)。本病は肺小細胞癌合併頻度が高く13),癌発見より2~5年先行して発症をみることがあり,約10%には小脳失調症を合併する14)。SOX-1抗体は神経筋伝達に直接関係はないが癌合併を示唆する有力な指標となる15)。本病の脇役的病原抗体として,ACh遊離に必須なカルシウム・センサーで,上述のカルシウムチャネル蛋白同様肺癌にその発現が証明されているシナプトタグミン3)に対する抗体(シナプス小胞開口時膜外露呈N端53残基を認識,その人工抗原で動物モデル作出可能)がある8,9,12)。また,G-protein-coupled receptorとしてphospholipase Cシグナル系を介しACh遊離障害を補償する機構17-20)に関わるM1タイプのムスカリン性AChRに対する抗体も高率に検出される16,17)。これは補償障害とともに,本病にみられる自律神経障害16)の背因になっている可能性がある。

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