- 著者
-
橋本 衛
池田 学
- 出版者
- 医学書院
- 巻号頁・発行日
- pp.427-432, 2015-04-01
びまん性白質病変の精神症状を考察するうえで,皮質病変の影響を除外することは重要な問題である。特に高齢者ではアルツハイマー病(AD)を高頻度に合併するため,皮質下虚血性病変による症候と捉えていたものの中に皮質症状が混じっている可能性が十分ある。しかし,両者を厳密に分離することは困難であるので,本稿ではADと皮質下虚血性病変との相互作用,ADに皮質下病変を合併した際の臨床症候について考察する。虚血性白質病変やラクナ梗塞などの皮質下の小血管病変は,前頭葉を中心とした神経ネットワーク(前頭葉基底核視床回路)を障害し,高齢者においては認知機能低下,特に遂行機能障害を引き起こすことが報告されている。また,これらの病変がうつのリスクであることは繰り返し指摘されてきた。さらにこれらの皮質下虚血性病変がAD患者の妄想やせん妄などさまざまな精神症状のリスクとなる可能性も指摘されているが,研究は少なくそのメカニズムもいまだ不明な点が多い。