著者
寒 重之 宮内 哲
出版者
医学書院
雑誌
BRAIN and NERVE-神経研究の進歩 (ISSN:18816096)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.247-252, 2018-03-01

自己の表象と認識を担う脳部位の検討から,内側眼窩前頭前皮質,背内側前頭前皮質,前帯状皮質,楔前部および後帯状皮質から成るcortical midline structures(CMS)の重要性が明らかになってきた。これらの部位は安静時における同期的な活動を示す安静時ネットワークのデフォルトモードネットワークやサリエンスネットワークを構成する領域であり,これらのネットワークの異常と精神・神経疾患との関連が近年数多く報告されている。さらに,CMSを構成する領域の多くが痛みの認知に関わっており,そのことが他の感覚にはみられない痛みの特徴を生み出しているように思われる。また,病的な痛みの発生と維持には,脳における痛みの認知機構の異常が関与しているとの考え方が受け入れられるようになってきており,慢性痛患者を対象とした研究によってCMSとCMSに密接に関連する脳部位において構造的・機能的な変化が生じていることが数多く報告されている。痛みの認知に関係する多くの領域が自己に関連する情報の処理に関わっているという事実は,痛みの認知特性や慢性痛の病態を考えるうえでも,脳において表象される自己を考えるうえでも,貴重な視座を与えるものとなるだろう。

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ネットワークの異常と精神・神経疾患との関連が近年数多く報告されている。さらに,CMSを構成する領域の多くが痛みの認知に関わっており,そのことが他の感覚にはみられない痛みの特徴を生み出しているように思われる。 Cortical Midline Structures—「自己」と「痛み」 https://t.co/FhSvbgQ3Qv

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