著者
立石 潤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.897-905, 1983-09-10

I.はじめに スローウイルス感染症または遅発性ウイルス感染症28)は,周知のようにアイスランドの獣医学者Sigurdsson44)により1954年に提唱された概念であるが,それ以前に北欧ではヒツジの慢性病が知られており,その1つのスクレピーscrapieについては実験的伝播も行われていた9).Sigurdssonの提唱した概念は,①数ヵ月から数年にわたる長期の無症状潜伏期間ののち,②徐々に発病し,③遷延性,進行性で,④予後が悪く,⑤感染が1種類の動物の,単一の臓器または組織に限定して起こることである.このうち⑤は彼自身予想していたように,その後の動物実験の結果からは削除するほうがよいと思われるが,自然感染においてはほぼ妥当する.このうち既知のウイルスによる神経系の遅発性感染として麻疹ウイルスによる亜急性硬化性全脳炎SSPE,パポーバウイルスによる進行性多発性白質脳症PML,アデノウイルス32型や風疹ウイルスによる亜急性脳炎が知られている.これらは個々のウイルスと宿主側の要因,特に免疫機構との組み合わせにより持続性感染persistent infectionの形をとることが多い. さらに全く原因不明の発病因子が徐々に増殖して発病する亜急性海綿状脳症の1群がある.その代表はクロイツフェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt-Jakob病,CJDと略)であるが,動物への実験的感染とともに,人では臓器移植,手術,外傷などとの関連性が問題となっているので,以下この群を中心に述べる.

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