- 著者
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蔵野 信
- 出版者
- 医学書院
- 雑誌
- 検査と技術 (ISSN:03012611)
- 巻号頁・発行日
- vol.40, no.12, pp.1395-1397, 2012-11-01
はじめに
細胞・組織の代謝,機能維持に必要なコレステロールや中性脂肪は,疎水性であり,それ単独では循環血液中では存在できない.そのため,生物の循環血液中では,コレステロールや中性脂肪は,蛋白質とともに低比重リポ蛋白(low density lipoprotein,LDL)や高比重リポ蛋白(high density lipoprotein,HDL)のようなリポ蛋白という複合体の形をとって,組織間でやり取りされる.このリポ蛋白の形成に重要な蛋白は,アポ蛋白〔アポリポ蛋白(apolipoprotein,Apo)〕と呼ばれる.すなわち,アポ蛋白は,「血中での存在様式が主にリポ蛋白上である蛋白質」と定義されている.現在,日常臨床において測定されているアポ蛋白は,ApoA-Ⅰ,ApoA-Ⅱ,ApoB,ApoC-Ⅱ,ApoC-Ⅲ,ApoEであるが,その他,日常臨床にはいまだ導入されていないが,現在までに十数種類のアポ蛋白が同定されている.
アポ蛋白は,以前はリポ蛋白代謝にのみかかわる蛋白質であると考えられてきたが,多種多様の生物学的作用をもつと考えられてきているアポ蛋白もある.そのなかで本稿では,比較的マイナーなアポ蛋白であるが,特に近年,血管生物学,免疫学をはじめとするさまざまな分野において重要な生理活性をもつリゾリン脂質であるスフィンゴシン1-リン酸(sphingosine-1-phosphate,S1P)との関連が注目を集めているApoMについて概説する.