著者
福永 真治
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.40, no.12, pp.1397-1398, 2012-11-01

子宮内膜症(endometriosis)とは子宮内膜が異所性にみられる病変で,卵巣,卵管,骨盤内組織などに発生することが多い.子宮筋層にてみられる場合は腺筋症(adenomyosis)と呼ぶ.この異所性内膜組織は本来の内膜と同様に周期性を示す.卵巣では血性内容を容れる囊胞を形成し,チョコレート囊胞とも呼ばれる.子宮内膜症は,組織学的には内膜腺とその周囲の内膜間質組織よりなり,ヘモジデリンを貪食した組織球の浸潤を伴うことが多い.内膜腺がなく内膜間質成分よりなる子宮内膜症を間質内膜症(stromal endometriosis)という.本来,子宮内膜症は女性特有の疾患であるが,極めて稀に男性においてみられる.報告は英語論文で10例以下であり,その多くは泌尿生殖器組織である1~7). 傍睾丸に発生した自験例1)を紹介する.患者は69歳の男性で,左陰囊水腫の臨床診断のもと両側除睾術が施行された.本患者は9年前に針生検により前立腺癌(腺癌,Gleason score:4+5=9)と診断され,その後今回の手術まで長期の女性ホルモン療法を受けている.手術検体は,肉眼的に左睾丸は5.2×3.1×3.0cm大,多囊胞性で血性の漿液性内容を容れる.囊胞壁には出血,ヘモジデリンの沈着をみる.睾丸実質は高度の萎縮を呈す(図1).組織学的には囊胞内壁はほぼ一層の円柱状細胞で被覆される.間質では子宮内膜間質細胞に類似した均一な小型類円形細胞の増生,豊富な毛細血管,ヘモジデリンを貪食した組織球の浸潤が観察される(図2).その中に少数の小型腺管状の構造を認める.免疫組織学的には,囊胞の被覆細胞と小腺管組織はCAM5.2,vimentin,calretininに陽性,estrogen receptor,progesterone receptorは陰性であり,上皮細胞ではなく中皮細胞と考えられる.一方,間質細胞はCD10,estrogen receptor,progesterone receptorが陽性であり,内膜間質細胞と考えられる.部位,組織像,免疫染色より陰囊水腫の壁に出現した傍睾丸の間質内膜症と診断される.
著者
高木 淳 玉井 一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.340-341, 2005-04-01

“原罪”とはアダムとイブに象徴される人間が生涯負わされる罪(sin)のことである.アダムとイブの冒した罪をじっくり考える暇もないほどめまぐるしく移り変わる今の世の中で,免疫学で呼ばれている“抗原原罪”という現象はワクチン研究者にとって大きな重荷になっている.この現象は最初に受けた強い印象がいつまでも記憶されるように,工夫を凝らして作った型の数々のワクチンをいく度接種しても産生される抗体の多くは最初に接種したワクチンの型に対するものである.事実この現象はインフルエンザウイルス,デングウイルス,マラリアなどで認められている.病原体に感染するとナイーブT細胞によって免疫応答が開始され,病原体の排除のためエフェクターT,B細胞(障害性T細胞,形質細胞)が活性化し,病原体が駆逐されると記憶T,B細胞に再度の病原体の感染防御を託し死滅する.同じ病原体が侵入すると記憶T,B細胞はナイーブT細胞の活性化を抑制し,ただちに免疫応答する.しかし,インフルエンザウイルスなど初感染時から変異した病原体が感染すると,記憶T,B細胞は最初に免疫応答するはずのナイーブT細胞の活性化を抑制するので,最初に感染したウイルスの記憶に基づいたエフェクターT,B細胞を活性化させる(図1).その結果,最初のウイルスに存在した共通のエピトープだけに抗体が産生され二度目以降に感染したウイルスの変異したエピトープには抗体はあまり産生されない(図2).最初の記憶は消えないのである.インフルエンザウイルスは毎年少しずつ姿を変えて出現するので,感染するとまず初感染時の免疫記憶がよみがえるため,変異ウイルスは生き延びて新たな流行が拡大するのである. 母の記憶 Rh陰性の母親がRh陽性の胎児を妊娠したとき,胎児赤血球は胎盤を通過して妊娠中,特にほとんどの場合出産時に母親の循環血中に入り抗Rh抗体が産生され,Rh陽性の児の赤血球は破壊される.この現象は新生児溶血性疾患(hemolytic disease of the newborn,HDN)と呼ばれている.これを防止するために,出産後三日以内にRh陰性の母親が子どもの赤血球に反応する前に母親に抗Rh免疫グロブリン(Rh immunoglobulin,RhIg)を投与する.また,頻度は高くないが妊娠期間中の母子間出血も起こるので,それを防ぐために妊娠28週目に投与される.しかし,多くの場合母親はRh抗原に対し記憶B細胞を産生する.記憶B細胞はたとえ残存する抗体があっても抑制されないので,次回の妊娠時に特異性の高い抗Rh抗体が産生(二次免疫応答)されて重いHDNを発症することがある(図3).
著者
速水 貴弘
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.557-561, 2010-07-01

はじめに 従来,血糖測定は検査室内の生化学汎用測定器にて行われていたが,迅速性や簡便性の観点から自己血糖測定(self-monitoring of blood glucose,SMBG)機器が普及してきた.しかし,その一方で測定原理の違いからヘマトクリットや溶存酸素などの内的要因,マルトースやプラリドキシムヨウ化メチル(PAM)などの外的要因などさまざまな要因が測定値に影響を与えることが報告されている1~4). 今回筆者らは,アスコルビン酸大量投与後に低血糖症状を示しているのにもかかわらず,簡易血糖測定器にて偽高値を示した症例を経験した.干渉物質としてアスコルビン酸を用いた検討の報告5)もあるが,アスコルビン酸濃度は10mg/dlで,それ以上の濃度での影響は不明であった. そこで,高濃度アスコルビン酸が簡易血糖測定器およびポイント・オブ・ケア・テスティング(point of care testing,POCT)機器に与える影響について検討を行ったので報告する.
著者
鈴木 裕子 堀江 良一
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.822-826, 2007-09-01

サマリー 慢性リンパ性白血病(chronic lymphocytic leukemia,CLL)は,低悪性度成熟B細胞腫瘍の一つである.CLLは,欧米では65歳以上の白血病の40%を占め,1年に10万人当たり3人の発症がみられるが,わが国では20~30分の1以下と稀である.CLL細胞の形態は,通常のリンパ球とは見分けがつかない.定義上は,大きさが赤血球の2倍以下の成熟した小型リンパ球で,細胞質に乏しく,核クロマチンが凝集し,核小体は見られない.CLLの約10%に経過の早いリンパ腫へと変化するものがあり,報告者の名前にちなんでリヒター症候群(Richter's syndrome,RS)と呼ばれる.一般に,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫へと変化することが多いが,ホジキンリンパ腫(Hodgkin's lymphoma,HL)へと変化するものもある.RSの場合,それぞれの組織型に応じた治療が選択されるが,治療への反応が悪く通常1年以内に死亡する例が多い.化学療法での治療強度を上げても,寛解率の上昇にはつながらないとされる.治療後に部分寛解以上になったときに,造血幹細胞移植を行うことが最も長期生存が望めると報告されているが,わが国でのまとまった報告はない.
著者
清宮 正徳 野村 文夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.446-449, 2010-06-01

はじめに 採血前に患者さんに手を握ってもらうことはよく行われている.しかしこの際,強く握ったり,手を握ったり開いたり(クレンチング)した後,肘静脈から採血すると,カリウムが有意に上昇してしまう.手に力を入れることにより筋肉からカリウムが放出されることが原因である1).クレンチングによるカリウムの上昇は,The New England Journal of Medicine(NEJM)誌をはじめとして度々報告され2~4),注意喚起されていることから比較的周知されていると考えるが,手を強く握るだけでもカリウムが上昇すること3,5)はあまり注意されていない.本稿では,カリウムの偽高値が患者さんの自主的な手を強く握る動作によって簡単に起こることを示すとともに,当院の採血室における偽高値対策を紹介する.
著者
石橋 みどり
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.778-782, 2010-09-15

はじめに 非特異反応とは,測定対象以外の何らかの生体成分が測定試薬や採血管の添加物などの成分と異常反応を引き起こし,病態とかけ離れた測定値を示す現象を指す. 免疫学的測定で対象とする成分は生体内での存在様式が多様であり,基本的に生理活性に依存している抗原・抗体反応を原理とするため,その反応は複雑である.非特異反応の要因を解析するためには病態や治療,生体の個別環境などによる血清成分の量的,質的変化を把握するとともに,試薬の組成を十分に理解する必要がある.また,近年は試薬組成にとどまらず,採血管の素材や添加物,分離剤などが間接的に抗原・抗体反応に影響を及ぼすことも知られている1).
著者
美崎 英生
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.27, no.8, pp.973-980, 1999-07-01

新しい知見 臨床検査の医療における役割はますます大きくなっている.“患者にやさしい無侵襲あるいはそれに近い検体の微量化”,“結果がリアルタイムに出る迅速性”,“ベッドサイドで検査ができる簡便性”の要望が強い.その中で簡便な高感度測定法の役割は大きい.酵素サイクリングはその技術の1つとして,特に血液検体の多量採取が困難な乳幼児や小児,老人の検査(微量の血液を数百倍に希釈して測定),あるいは測定感度不足のため正確な測定ができていない物質の測定には期待が大きい.また,感染症の目視検査による迅速対応は重要である.酵素サイクリング法は数倍から数万倍程度の感度で測定が可能である.現在,酵素サイクリングを利用した検査薬としては総胆汁酸,ケトン体,カルニチン分画定量,リゾレシチン,羊水ホスファチジルグリセロールの測定系が開発された.さらにアンモニアや糖尿病関連物質などの微量物質の測定への応用が期待される.
著者
大川 龍之介
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.928-934, 2020-09-15

はじめに 研究はある程度定められた期間,予算内で遂行されるべきである.途中で予算を使い切る,予測通りに結果が出ず行き詰まる,研究者自身の不意な異動などにより研究を断念すると,せっかくの貴重な研究成果が公になる前に終わってしまう.したがって,これらの問題なく研究を遂行するためには,予算配分,想定外の結果が得られた際の次のアクション,研究期間の設定など,丹念に練られた研究計画書が必須である. また研究には終わりはなく,計画なき研究の遂行はにじんだ絵の具のように,不明瞭な広がりをみせてしまう.一定の区切りをつけて,そのユニットごとに研究成果をまとめ,報告していくことが肝要である. さらに研究には研究費が必要であり,部内における補助金の申請,各種財団や日本学術振興会の科学研究費(科研費)などの競争的研究資金を獲得するためには,多くの場合,研究計画書の申請が必須である.競争率の高い助成金を獲得するためには,優れた研究計画書を書かなければならない. 本稿では,主に助成金申請のための研究計画書の書きかたについて述べる.それはそのまま円滑な研究の遂行につながるものと考えられる.なお,研究デザイン,研究テーマの見つけかたに関しては他の項(2章「研究の進めかた」)を参考いただきたい.
著者
大沼 健一郎
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1001-1005, 2020-09-15

はじめに 論文を執筆するうえで,文献は研究背景や研究の必要性の考案,研究方法の立案,さらには,自身の新知見の主張などにおいて重要である.研究を実施するにあたって,研究前・研究中・論文作成時とさまざまな段階で文献を検索・収集し,管理する必要がある.しかし,膨大な文献を管理することとなり,容易ではない.特に,論文執筆時の参考文献リストの作成は,投稿誌を変更すれば修正が必要になるなど,大変煩雑な作業である. 本稿では,文献管理にかかわる煩雑な作業を効率化することができる5種類の代表的な文献管理ソフトについて概説する.
著者
小林 剛
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.952-955, 2020-09-15

はじめに 学会発表をすることが決まると,初めにやらないといけないことは“抄録(abstract)作成”である.抄録は学会発表の土台であり,抄録の出来が学会発表の出来を左右するといっても過言ではない.さらに,学会発表後の論文投稿においてもabstractが重要な役割を担ってくる.査読者がその論文を評価する際,初めにabstractから目を通して,論文の大体の流れを把握する.論文の“第一印象”はabstractによって決まるといっても過言ではないだろう.したがって,本文がいくら上手に書けていたとしても,abstractがイマイチだと,すぐにリジェクトされることもある. 学会発表において,自分が登録した演題が採用(accept)してもらえるかどうかは,発表タイトルとその抄録の内容によって全てが決まる.国内学会では,比較的採用率が高いものが多いのに対し,国際学会では採用率が低いものも存在する.基本的に,学会の査読者は短時間で抄録を採点し,複数の査読者の採点結果によって,その演題の採否が決定される.査読者にとっては,短時間で採点をしないといけないため,わかりやすくて読みやすい抄録ほど,高い点数をつけることが多い.したがって,文字数が限られているなかで,いかに“わかりやすく,魅力的な抄録”を書けるかが重要になってくる. 本稿では,採用してもらえる魅力的な抄録を書くためのノウハウを紹介したいと思う.これから学会発表デビューを考えている方や,よく学会発表をされている方にも,ぜひ目を通していただきたい.
著者
桝谷 亮太
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.985-988, 2020-09-15

はじめに 研究は,計画を立案して倫理申請し,その成果を学会発表や論文執筆により社会に還元するまでが1つの流れである.しかし,いざ国内雑誌に投稿しようと思って書き進めたものの,初めて論文を執筆する場合は文章がうまくまとまらず,苦労することが多いのではないかと思う.実際,ルーチン業務の傍らで研究を行う臨床検査技師にとって,研究の手法のみならず文書における日本語表現の方法まで学ぶ機会は少ないのが現状である.科学論文を書くにあたっては,守るべきルールやポイントがあり,それを知っているだけで論文の書きかたはすぐ上達する. 本稿では,一般的な文書と違い科学論文で求められる表現について紹介するとともに,表記法のルールについて解説する.これから国内雑誌への投稿を目指す方にとって,少しでもお役に立てば幸いである.
著者
小野 佳一 蔵野 信
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1340-1341, 2014-11-01

Q なぜ,HbA1cは鉄欠乏状態では高めに出て,鉄欠乏性貧血回復期では低めに出るのですか? 一般的な貧血ではどうですか? 理由も含めて教えてください. A ヘモグロビンA1c(hemoglobin A1c:HbA1c)値は,過去1カ月間の血糖値が50%,それ以前の血糖値が残りの50%寄与していることによって,過去1〜2カ月の血糖コントロールの指標として,また,“慢性”高血糖状態を定義とする糖尿病の診断基準の1つとして用いられています.ただし,その値の解釈には,HbA1c値は赤血球の平均寿命の影響を受けるため,赤血球寿命が変わる病態においては血糖コントロールを反映しないこと,劇症1型糖尿病のような急激に血糖が悪化する病態においては患者の現在の状態の血糖値ほど上昇しないことなど,注意を要する場合があります.
著者
赤崎 兼義
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.50-52, 1975-01-01

ルードウィヒ・アショフ教授は近世における最も有名な病理学者ルードルフ・ウィルヒョーの孫弟子に当たっている.教授は病理解剖学の領域で傑出していたばかりでなく,実験病理学や病態生理学についてもその基礎をきずき,また病理学と生化学や免疫学など近接医学との関係にも深い関心をはらうという,きわめて幅広い視野を持つ病理学者であった.教授の病理学,広くは医学全般への貢献は,ウィルヒョーの業績にも十分比肩しうるもので,20世紀前半における病理学者の最高峰に位置づけてもよかろう.特に日本人にとって忘れてならないことは,教授が無類の日本人びいきであり,日本病理学の発展に絶大な貢献をされたことである,アショフ教授の教室に留学し,その指導を受けた日本人の数は,故長与又郎教授の調べによると,実に51名の多きに達し,そのうち23名までが病理学講座の主任教授となっているという.これほど多数の日本人学者を育てた外国人の学者が他にあるであろうか.筆者は寡聞にして知らない. 筆者はアショフ教授の最後の日本人門下生として,1年間をフライブルグで過ごし,つぶさにその学者としての研究態度を観察する機会に恵まれたので,この機会に教授について見聞したところを述べたいと思う.

1 0 0 0 TMA法

著者
前田 平生
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.194, 1997-06-15

核酸増幅法の1つであるTMA(transcription mediated amplification)法は,1細胞に1個のDNAの遺伝子よりも数千コピー存在するリボソームRNAの遺伝子をターゲットにすることにより,感度を必要とする感染症などの検出系において開発,実用化されたRNA増幅法である.現在では,このTMA法は,DNA依存性DNA合成酵素活性を持つ逆転写酵素とRNAポリメラーゼを利用することにより,DNAをターゲットとしたRNA増幅法として改良が加えられ,HLAクラスⅡ遺伝子のタイピングに応用されている.白血球より抽出したDNAは相補的水素結合で二本鎖を形成しているが,熱変性により一本鎖DNAにする.次に温度を下げ,プロモータープライマーとアニーリング後,DNA依存性DNA合成酵素活性を持つ逆転写酵素を加え,プライマー伸長反応による二本鎖DNAを合成する.再び熱変性を行い,温度を下げ,第2プライマーのアニーリング後,さらに逆転写酵素とRNAポリメラーゼにより第1プライマーの配列が導入された二本鎖DNAが産生され,この二本鎖DNAを鋳型にしてRNAポリメラーゼが働き,最終産物として相補的な一本鎖RNAが多量に合成される.
著者
増田 亜希子
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.771-775, 2013-09-01

はじめに 形質細胞はBリンパ球がさらに分化した細胞であり,免疫グロブリン〔IgG(immunoglobulin G),IgA(immunoglobulin A),IgD(immunoglobulin D),IgE(immunoglobulin E)〕を産生する.形質細胞が単クローン性に増殖したのが形質細胞腫瘍であり,多発性骨髄腫(multiple myeloma,MM),意義不明の単クローン性γグロブリン血症(monoclonal gammopathy of undetermined significance,MGUS),原発性アミロイドーシス〔AL(amyloid light chain)アミロイドーシス〕などが含まれる(表1)1,2). 免疫グロブリン遊離L鎖κ/λ比(free light chain κ/λ ratio,rFLC)はネフェロメトリー法によって血清中の遊離κ鎖およびλ鎖を測定し,κ/λ比を算出する検査であり,2011年9月に保険収載された.MMなどの形質細胞腫瘍の場合,遊離κ鎖もしくはλ鎖のどちらか一方が増加するため,κ/λ鎖比が大きく変化する.一方,感染症や自己免疫疾患などの場合,κ/λ鎖比はほとんど変化せず基準値内に収まる.rFLC測定は,従来から用いられている免疫固定法(immunofixation electrophoresis,IFE)に比べて高感度のM蛋白検出法であり,形質細胞腫瘍の診断,予後予測,治療効果判定などに用いられる.特に,非分泌型骨髄腫(non-secretory myeloma)や軽鎖型骨髄腫〔Bence Jones蛋白(Bence Jones protein,BJP)型骨髄腫〕の診断に有用である. 本稿では,遊離軽鎖(free light chain,FLC)検査の測定原理や臨床的意義について概説する.
著者
田村 高志
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.650-651, 2002-07-01

性染色質とは 1949年,BarrとBertramは雄ネコの神経細胞休止核には見られないが,雌ネコの細胞核周辺部に塩基性色素に濃染する小体を発見した1).また,ヒト女性口腔粘膜細胞などにもこの小体がみられ,これを性染色質(sex chromatin)あるいは発見者の名にちなんでバー小体(Barr body)とも呼んでいる.性染色質は,後に蛍光色素による男性休止核にみられるYクロマチンが発見されたため,Xクロマチンと呼ぶように改められ,XクロマチンとYクロマチンとを総称したものになった.性染色質検査は性染色体異常のスクリーニング検査として行われている. 現在,性別の確認はSRY遺伝子やXとY染色体上に座位するアメロゲニン遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)法によって検出することで正確な鑑別が可能である.これらは法医学領域,異性間骨髄移植後の生着の確認やオリンピックなどのスポーツ大会でのセックスチェックに応用されている.
著者
永尾 暢夫
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1072-1073, 2000-07-01

はじめに Kidd系の血液型は抗Jkaと抗Jkbを用いて,Jk(a+b-),Jk(a+b+),Jk(a-b+),Jk(a-b-)型の4通りに分けられる(表).そのうちJk(a-b-)型はKidd系のまれな血液型で,amorphic allele Jkのホモ個体によるものと,優性タイプの抑制遺伝子In(Jk)によるものとが知られている.Jkのホモ接合体によって発現されるJk(a-b-)型(図11))はポリネシア人に多く見られ,尿素溶液の溶血に対して抵抗性を示す.ちなみに日本人の頻度は0.002%で,50,000人に1人である2).そのほとんどはJk遺伝子のホモ個体である.In(Jk)によるものは後述のOkuboら3)の例と,他に片岡ら4),村田ら5)の報告があるのみで,諸外国でもその報告は極めて少ない.
著者
亀子 光明 北村 弘文
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.764-766, 2008-08-01

はじめに 免疫学的方法を原理とする測定法では,被検血清中に存在する異好抗体(heterophile antibody,hAb)により偽陽性反応が起こり,測定結果が異常高値を示す場合がある.この作用機序は1986年Boscatoら1)により,ヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin,hCG)測定系において報告されており,その干渉に関与する因子をantibody-binding substancesと表現している. 現在では,マウス免疫グロブリンに結合するhAbをヒト抗マウス抗体(human antimouse antibody,HAMA)と呼んでいる. 初期の腫瘍特異的抗体療法では,腫瘍細胞に対するマウスモノクロナール抗体(monoclonal antibody,mAb)を患者に繰り返し投与すると,その抗体は,マウス由来の異種蛋白であるため,高頻度でHAMAが出現し,それが原因でアナフィラキシーが多発したことが報告されている2).また,その治療を受けた患者血清では,サンドイッチ法による癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen,CEA)測定において,偽高値となることも報告されている3,4).本稿においては,免疫反応に及ぼすHAMAの影響やその回避法について述べる5,6).
著者
柳田 絵美衣
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.75, 2015-01-01

どうも,はじめまして.「検査と技術」の新コーナーが始まりましたよ! おぉ! 「突然おまえは誰なんだ!」という皆さまの心の声がビッシビッシ伝わってきています.そのツッコミ,待ってました! 記念すべき第1回目は自己紹介致しましょう! 私は,神戸大学医学部附属病院病理部の臨床検査技師「柳田絵美衣」と申します.職場の仲間から(教授からも……),「やなさん」と呼ばれております.「エミイちゃんが国家試験に受かったなんて……奇跡だぁ!」と学校中の先生に驚かれ早9年.卒業後は病理検査専門の会社に入り壮絶……な4年間を過ごした後に,現職場に入りました.趣味は仕事,車,絵画,カメラ,旅行,寺,プロレス観戦……片っ端から興味をもつ,好奇心旺盛の育ち盛り真っ盛りでございます.「柳田の血液型は何型だと思いますか?」と質問すると即「AB」と,誰もが高い正解率を誇るほどの典型的な変人AB型……だそうです(本人は普通の人間だと思ってますからね.本気で).
著者
田村 邦夫
出版者
医学書院
雑誌
検査と技術 (ISSN:03012611)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.267-271, 2000-03-01

目的 酸性粘液多糖類はアニリン系塩基性色素と反応してメタクロマジー(異調染色)を起こす.例えば,トルイジン青水溶液で多くの組織成分は青色に染まるが,粘液や軟骨などは色素が本来有していない赤色調が出現して赤紫色に染まる.メタクロマジー自体は古くから知られていて,Ehrlichによれば「ある色素で組織学的要素を染める場合,要素が色素溶液とは異なった色調で染色される」と定義されている.溶液中でもメタクロマジーはアニリン系塩基性色素と酸性基を有する高分子化合物の間で起こり,最大吸収波長が長波長側にずれることが確認されている.病理組織学においてはメタクロマジーを起こす物質はコンドロイチン硫酸,ヒアルロン酸,ヘパリンなどの酸性粘液多糖類や核酸,アミロイドなどがある. メタクロマジーの反応機構は-SO3H,-COOHなどの酸性基を有する酸性粘液多糖類や-PO4を有する核酸とアニリン系塩基性色素がイオン結合する化学反応と理解されている.酸性色素やラック性色素(色素自体に染色性はないが,塩類を結合させることにより染色性を獲得する色素)でもメタクロマジーは観察されるが,これらの色素についての発現機構は不明であり,塩基性色素とは異なった発現機構によるものと考えられている.また,その組織化学的な意義についてもほとんどわかっていない.このため,特別な断りがない限りメタクロマジーといえばアニリン系塩基性色素によるものを指している.