著者
長谷川 泉
出版者
医学書院
雑誌
保健婦雑誌 (ISSN:00471844)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, 1958-01-10

人間は理性を持つた存在であるから,理智が生活を規制する.しかしとぎすまされた理性のみで振舞う冷徹さは,人間の持つ反面である感情と齟齬し相いれない場合も出てくる.そのような場合に,どちらを優位にたてた行動をするかという判定は,極めて難しい問題である.性格や環境によつて,その場合の行動が異ることがあり得る.見方は人によつて違う. 有島武郎の「実験室」(大正6.9「中央公論」)にはこの問題に示唆するテーマが扱われている.主人公は片目の若い医師である.科学者であるから,当然のことながら,理性的に行動しようとする.この作品では,その行動は最後に復讐されている.だが,考えさせられる多くの問題を含んでいよう.

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