著者
溝部 俊樹
出版者
メディカル・サイエンス・インターナショナル
巻号頁・発行日
pp.1018-1024, 2020-10-01

プロローグ再現性と客観性こそがサイエンスの命である。「私だけがSTAP細胞作れます」と言っても誰も相手にしてくれない。しかしEBM worldは違うようである。周術期高濃度酸素投与によるアウトカムの改善が2000年の『New England Journal of Medicine(NEJM)』誌に掲載されたものの,その後の10余りのランダム化比較試験(RCT)の結果はバラバラ。おまけにメタ分析の結果もバラバラ。最初の提唱者がRCTをやり直して自ら有効性を最終的に否定したら,今度はWHOがガイドラインで周術期高濃度酸素投与を世界中に推奨する始末1)。 基礎科学basic scienceでは,そのmethodologyすなわちassay系の信頼性が命である。しかしEBM worldは違うようである。2001年にNEJM誌に掲載された“自分の所属する単一施設で盲検化もせずに行われた厳格血糖管理によるアウトカムの改善”が,なぜか世界中の麻酔・集中治療領域で大流行。その後のRCTすべてで有効性が否定されたが,唯一,有効性を認めた提唱者自身の続報はpost-hocサブグループ解析を多用するという禁じ手を使っていた。basic scienceのassay系にあたるのがRCTでは統計解析であるが,用いる統計方法によって結論が異なるのは当然である,とEBMの専門家も居直る始末2)。 結局EBMとは,「今後30年以内にマグニチュード7以上の地震が起きる確率は80%です」という地震発生予測と同じであろう。無視はできないが信じると風評被害を生みかねない。これらの詳細はLiSAバックナンバーを参照していただくとして,まずは3年前の周術期高濃度酸素投与のドタバタの続きからお楽しみあれ。

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