著者
福武 敏夫
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.903-906, 2015-10-25

はじめに かゆみは「掻かずにはおられない行動を引き起こす不快な感覚」とされ,日常臨床においてしばしば訴えられる症状であり,通常,皮膚疾患や代謝性・内分泌性などの内科疾患が原因となる2,6)(表1).神経疾患ではあまり前景に立つ症状ではなく,原因として見逃されやすい.しかし,前回取り上げた帯状疱疹では痛みが注目されるが,持続性のかゆみが訴えられることがある7).さらに,多発性硬化症や視神経脊髄炎では一時的反復性のかゆみが訴えられることがしばしばあるし,その他の脊髄炎や脊髄腫瘍による症例報告も散見される8). 一方,これとは別に,かゆみが脊椎脊髄疾患を悪化させる可能性がある.KiraとOchi5)はアトピーが関連した平山病について報告しており,筆者らは平山病患者が高率にアトピー性素因(と高IgE血症)を伴うことを見出した4)が,さらに,若年者においてアトピー性皮膚炎と軽度の頸椎症性変化とが関連していることも明らかにした3).これらの病態的関連は未解明であるが,アトピーに関連する病理過程が硬膜や脊椎の物理的特性を変化させるのではないかと思われるほかに,かゆみに対し頻回に引っ掻く動作をする際の首の前屈動作が影響しているのではないかとの仮説も立てている1).平山病における臨床情報の積み重ねからは,患者がギター愛好家で首を繰り返し前屈しているとか,サッカーのヘディングを頻回に行ったとか,頸部動作が誘因の1つと考えられる症例にしばしば遭遇する1). 本稿では,かゆみに対する首の動作が頸椎症性脊髄症を悪化させたのではないかと強く疑われる症例(症例1)と,アテトーゼ型の脳性麻痺に伴う頸椎症性脊髄症により左体幹のかゆみが出現し,かゆみに対する首の動作により脊髄症が悪化したと思われる症例(症例2)を紹介する.

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