著者
高倉 祐樹 大槻 美佳
出版者
日本言語聴覚士協会
巻号頁・発行日
pp.258-274, 2016-12-15

失構音の病態に関する下位分類を試み,その機序の差異を検討した.対象は失構音を呈した患者10名(2名は軽度の失語症を合併),失構音を伴わないディサースリア患者2名の計12名の患者群(69.0±11.7歳)と健常群16名(65.5±16.0歳)である.聴覚心理学的評価の結果,失構音群は①構音の歪み優位,②音の連結不良優位,③歪みと連結不良が同程度,④連結不良なし,の4タイプに分類可能であった.各タイプの病巣は,①左中心前回後方,②左中心前回前方・運動前野,③左傍側脳室皮質下,④左被殻・視床,と相違を認めた.各タイプの病態をDIVA(Direction in sensory space Into Velocities of the Articulators)モデルに基づき解釈すると,①はArticulator Velocity and Position Mapsの障害,②はSpeech Sound Mapの障害,③は①と②の合併,④は発話のフィードバック制御系の障害と捉えると,それぞれの症状の差異が説明可能であり,病巣との整合性も高いと考えた.

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本邦においては、この論文の以前と以後で失構音(アナルトリー)の捉え方が変わった、と言っても良いのではないか。中心前回中下部が責任病巣で良い、そして皮質-基底核ループの障害で失構音は出現する。 Pierre Marieの方形が現代になって形を変えて捉えれた。 https://t.co/d6WchcoPAL
失構音(anarthrie)の分類は、これで共通理解として良いと思う。その機能局在としては中心前回中下部。しかし、皮質-基底核ループの障害でも出現する。皮質と皮質下ではその症状が異なり、対応も異なる。それはフィードフォワードとフィードバックの考え方が有用。 https://t.co/d6WchcFSCL

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