- 著者
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勝沼 俊雄
- 出版者
- 協和企画
- 巻号頁・発行日
- pp.560-563, 2020-07-01
1911年にNoonらが枯草熱に対する治療法として,世界で初めて皮下免疫療法(subcutaneous immunotherapy:SCIT)の効果を報告した1).筆者がレジデントの時代,SCITは「減感作療法」と呼ばれ,小児においても喘息やアレルギー性鼻炎の長期管理において,非常にポピュラーな治療法として実践されていた.しかしながら国内に治療用としての抗原製剤は存在せず,各医療機関においてハウスダストやスギ花粉の診断用抗原エキスを転用して治療を行っていた.そのためか筆者は,同治療の有効性を当時は十分に実感できなかった.このため,筆者はSCITから遠ざかったし,国内外のコンセンサスとしても喘息長期管理における位置づけは低位といえた. ところが1999年にスギの標準化エキス(トリイ)がわが国で使用可能となり,SCITが改めて評価されるに至った.世界的にもダニを含めた抗原の精製度が増して標準化されたことにより,小児の喘息やアレルギー性鼻炎に対する有効性を論述した論文が次々に報告され始めた.(『I.吸入性抗原と舌下免疫療法』の「1.皮下免疫療法の効果と問題点」より)