- 著者
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田中 麗子
和田 康夫
- 出版者
- 協和企画
- 巻号頁・発行日
- pp.482-487, 2019-05-01
伝染性膿痂疹は小児に好発する表在性細菌感染症である.夏季に多く虫刺されや外傷をきっかけに紅斑,水疱,びらんを生じる.水疱が飛び火するため,別名「とびひ」と呼ばれる.原因菌に黄色ブドウ球菌とA群β溶血性レンサ球菌があるが,近年メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)によるものが増加している.臨床像から水疱性膿痂疹と痂皮性膿痂疹に分類され,痂皮性膿痂疹は全身症状(発熱,所属リンパ節腫脹,咽頭発赤,咽頭痛など)を伴うことがある.従来,水疱性膿痂疹の場合は黄色ブドウ球菌,痂皮性膿痂疹の場合はA群β溶血性レンサ球菌がそれぞれ原因菌とされてきた.しかし,痂皮性膿痂疹では黄色ブドウ球菌とA群β溶血性レンサ球菌の両方が分離されることがあり,臨床像と原因菌は必ずしも一致しないとの報告もある1).また,原因菌がA群β溶血性レンサ球菌の場合は後日,糸球体腎炎を併発することがあるため尿検査が必要である.原因菌を特定することは治療や合併症を考えるうえで重要である.
伝染性膿痂疹はMRSAが原因となることがあり,治療に難渋することがある.起因菌がMRSAの際の抗菌薬選択には感受性試験結果が重要となるが,治療対象は小児である.小児には使用しづらい薬剤も多い.本稿では伝染性膿痂疹の治療として統計学的結果をもとに検討した.(「はじめに」より)