著者
風間 信隆
出版者
日本経営学会
雑誌
經營學論集 第86集 株式会社の本質を問う-21世紀の企業像 (ISSN:24322237)
巻号頁・発行日
pp.F25-1-F25-9, 2016 (Released:2019-10-01)

ドイツでは「共同決定」制度の法制化により,利害多元的統治モデルが制度化されている。しかし,1990年代後半以降,EU統合とグローバル化の急速な展開,伝統的安定株主の「消滅」と外国人機関投資家の圧力,さらには「新自由主義」的思潮の下での「株主価値重視経営」の喧伝の下で,「協調型資本主義」の「終焉」とまで主張されてきた。同時に,この時期,ドイツ固有の企業統治システムを維持するドイツ企業も存在したが,なかでも欧州最大の自動車会社に躍進したフォルクスワーゲン社はポルシェ・ピエヒ一族の過半数所有という形で資本市場からの圧力を遮断し,「長期連帯主義」に依拠した伝統的企業統治を維持してきた。しかし,2015年9月に発覚したVWディーゼルエンジン排ガス規制不正スキャンダルは,巨額のリコール・損害賠償費用,ブランド価値の棄損等,大きな打撃を受けている。本稿は,まず特に2000年代以降のVWの多元的企業統治の経路依存的進化の具体的在り様をたどるとともに,このインサイダー型企業統治構造が有する,克服すべき課題も明らかにする。

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