著者
千葉 晃
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.93, 2004 (Released:2004-07-29)

1.目的 気候学・気象学辞典(1985)によると、日最低気温とは「24時間内にもっとも低い気温」と定義され、「晴れた日は日の出前後に出現する」と言われている。 日最低気温の出現時刻を場合分けをせずに単純に集計すると、日界に近接した時間帯にその出現頻度が大きくなり、辞典の内容とは矛盾している。晴天日のみを抽出したいが、雲量データがないので他の方法を使用するしかない。 また1時間値よりも詳細な検討を期待して10分値を使用すると、情報量こそは単純に6倍となるが時刻特定を行おうとするといくつかの問題点が介在してくる。そこで本報告では、アメダス10分値を使用して最低気温の出現時刻の特定を行う場合、その問題点と手法について、北海道内の地点を一事例として試案を提示する。2.資料 解析資料は、気象庁提供のアメダス観測日報10分値(1999・2000・2000年の3冬期の1月と2月、計179日)とした。1979年以降のアメダス1時間値により日本低極を記録している(気象庁WEB・千葉,2000による)北海道旭川市江丹別の事例を用いた。 アメダス江丹別は、旭川市江丹別町にある地点で、「江丹別そば」で有名な地区である。石狩川水系の江丹別川流域の小盆地で、谷は南北に走る。放射冷却の発生しやすい地形となっており、気象官署の旭川と比較した報告なども存在するので比較検討に適した地点と判断した。3.方法と問題点 従来のように日界を午前0時とし24時間全てを解析対象とすると、当日日中の寒気流入などで午後に日最低気温が記録されるケースを拾ってしまう。晴天日の最低気温の出現時刻を特定するという意味があるので、午前0時10分から午前9時までに絞り、この区間を解析対象とした。 また、前夜半からの放射冷却が順調に進行したとしても、暖気流入などにより放射冷却が鈍化し最低気温が午前0時10分に記録されるケースもある。このような日界の影響による最低気温の抽出を極力避けたいので、場の統一も不可欠と考えた。さらに、擾乱や日変化の小さい曇天日を事例に含まないことが重要となる。しかしながら、各アメダス地点では雲量計測はなされていないので、179例の中で最低気温が低い事例を36例(20%)を抽出し、雲量が少なく放射冷却が進んだ日と見なした。抽出例からモデルケースとして、気温の低い方から5番目までの事例を示す。 さて、次にアメダスの分解能は0.1℃であるがその誤差は±0.25℃ある。気温最低値とその2位の値が0.2_から_0.3℃以内でかつ、両者に時間的な隔たりがあれば、2位のデータも軽視すべきではない。逆に最低値のみで議論するのは危険である。従って、当日朝の低い方から1位から6位までのデータも含め統計をとることにした。この抽出方法を使用すると、日界付近の事例は抽出されにくくなる。4.この方法による結果 上記の手法で抽出した結果、アメダス江丹別では午前6時30分の15例を最大に6時から7時20分まで7時10分まで9事例以上を記録し、日の出時刻(旭川7時4分_から_6時10分)とほぼ対応していることが明らかになった。

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[気象] 要旨と外れるけど、日最低気温が23時に発生しやすい理由として、寒気移流時を挙げている

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