著者
村山 祐司
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.100157, 2015 (Released:2015-10-05)

GIS革命は,都市地理学にどのような方法論的発展をもたらしたであろうか. 都市に関するデータは多岐にわたり,センサスをはじめ膨大な地理空間情報がデジタル化され蓄積されてきた.最近では,POS,各種統計の個票,さらに都市住民がSNSを通じて発信するボランタリー情報なども利用可能になっている.リアルタイムで提供される非集計の情報は,位置と時間を付与した時空間データとして体系的に整備していくことが求められ,データベース構築に対してGISの果たす役割は大きい.コミュニティレベルを例に挙げれば,字,町丁,地区,学区,自治会区,あるいはメッシュなど,さまざまなスケール単位 で自在にデータを組み替えられるし,位置・時間情報を手がかりに,研究目的に沿う新たな空間データを作り出すことも難しくない.可変単位地区問題(MAUP)にも柔軟に対応できる. これまで概念提示に留まっていた精緻な空間モデルや分析手法を操作可能にするとともに,実証研究への適用を実現させたGISの功績は大きい.グローバル/ローカル・モデル,ボロノイ分割,空間的自己相関,パターン認識など,その事例は枚挙にいとまがない.高度な空間解析機能がGISソフトウェアにモジュールとして組み込まれ, GIS初心者でもこれらの機能を難なくハンドリングできる.これらの空間解析機能を駆使した実証的な都市地理研究を通じて,新たな知見が数多く見いだされている. 今日,高精細な衛星画像が安価で入手可能になり,リモートセンシング(RS)とGISを結びつけた都市の空間分析が存在感を増しつつある.たとえば,ランドサット画像から都市的土地利用・被覆を導出し,社会経済的特性や人口分布とグリッド単位でオーバレイさせ,それらの関連性を探る研究があげられる.ALOS,ドローン,航空レーザ測量などからDEM,DSMを導くことで建築物の高さ(DSM-DEM)を自動計測し,都市の水平的拡大とともに垂直的拡大を時系列的に3D可視化する試みもみられる.NDVI(植生指標)を算出し,定量的に都市緑地の量や分布を推定することもたやすい. 多種多様な属性が同一基準で都市ごとにデータベース化されれば,研究者間で情報を共有でき,都市空間の比較研究も飛躍的に進むであろう.これまでの都市地理学は,特定の都市を対象とした個別実証分析が多数を占めた.GIS革命は個々の都市の機能や特性を都市群全体の中に位置づける相対的思考を醸成させ,都市が有する一般性と固有性の議論を深化させた.GIS革命はいわば触媒の役割を果たし,GIS技術を武器にしながら,時空間概念を旗印に専門分化が進んだ都市地理学の諸分野を結びつけるだけでなく,時空間分析に関心を持つ隣接諸科学も引き寄せたと言えるかもしれない.計量革命は空間プロセスの研究を興隆させたが,GIS革命は空間プロセスから空間予測の研究,さらに空間制御・管理の研究へと都市地理学をいざなった.ジオシミュレーション技法を活用した空間予測モデル,遺伝的アルゴリズム,セルオートマタ,ニューラルネットワーク,エージェント・モデルなどを活用した精緻なシナリオ分析は,現実に即した都市政策や都市計画の策定に貴重な情報を提供する. 重要なのは,アーバナイゼーションやメトロポリタニゼーションといった空間プロセスを解き明かすメカニズム研究に加え,持続可能な都市像すなわち理想的なアーバニティ,メトロポリタニティを科学的に見定め,都市の空間動態を今後いかに制御・管理すべきかを科学的に提示することである.そこには,フォアキャストではなくバックキャスト的思考が求められる.GISの果たす役割は大きい.

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