著者
川上 榮一 土屋 正光
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.C0314, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】力士の大型化が進み、故障で休場力士が増加していることが問題となっている。平均体重は155.5Kg(平成15年7月場所)で、ピーク時よりは低下しているものの故障休場力士は後を絶たない。重い体重は相撲に勝つための一つの重要な要素となるが、下肢関節に与える負担は大きくなり、けがの発症の大きな要因とされている。今回トップクラスの力士の体重と膝筋力の関係を検討し、力士のけがの予防を目指した一知見を得たのでここに報告する。【対象者と方法】大相撲十両及び幕内力士69名(体重156.2±20.4kg 年齢27.0±3.3才)の膝屈伸筋力をBiodex system3を用いて測定した。測定した角速度は伸筋0°、60°、180°、300°、屈筋60°、180°、300°である。伸展0°のピークトルク最大値を記録した力士の体重を指標として群分けを行い、測定結果を比較検討した。【結果】1.全対象者において、体重とピークトルクの相関関係は得られなかった。2.全対象者において、体重と体重比には伸筋、屈筋共に負の相関があった(p<0.01)。3.伸展0°のピークトルク最大値を記録した力士の体重は160.5kg(WBI1.16)であり、それ以上の体重の力士はその最大値を超えることができなかった。4.指標体重力士の体重以上、未満で群分けをすると、体重160.5kg以上群(以下A群)28名(体重176.0±14.8kg年齢27.8±3.5才)、体重160.5kg未満群(以下B群)41名(体重143.1±11.2kg年齢26.6±3.2才)であった。5.A群の伸筋、屈筋の体重比は伸展0°を除いてB群より平均値が低く、有意差(p<0.05)がみられた。6.A群の平均伸筋力は伸展0°を除いてB群を上回ったが有意差は見られなかった。7.A群の平均屈筋力はB群より全てにおいて平均値が低く、角速度300°では有意差(p<0.05)がみられた。8.前方推進力に関与すると思われる体重と膝伸筋力(kg換算)の和を体重と比較すると正の相関があった(p<0.01)。【考察】体重を十分に支えることができる筋力があればけがの予防につながると言われているが、大相撲力士の体重とピークトルクの相関は得られなかった。体重比には負の相関があり、体重が重い力士ほど膝への負担が大きくなっている。また、160kg以上の力士は膝伸筋出力をコントロールするといわれる高速域での膝屈筋力が有意に低下しており、大型力士が負ける時は前に倒れこむことが多い原因となっていると考えられる。160kg以上の力士は相撲において体重への依存が高まっている事が分かったが、膝筋力についてだけの考察にすぎないが体重が重いことが相撲に有利とも言える結果であった。大型力士のけがの予防には減量、もしくは上記弱点の補強が重要である。

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