著者
宮田 信彦 中川 佳久 小串 直也 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0380, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】頸長筋は頸椎椎体の前・側面を走行する頸部屈曲筋として知られ,頸椎の過度な前弯を防ぐ働きがあるとされている。近年,慢性頸部痛に対する頸長筋のトレーニングが注目され,考案されている。生活でヒトは抗重力位に対し,頭頸部を正中位に保持する立位もしくは座位の機会が多い。そのため,頸長筋のトレーニングも立位もしくは座位にて行う方法が一般的である。しかし,背臥位でのトレーニング中の頸長筋についての報告はあるが座位での報告はない。したがって,本研究は座位にて頭頸部屈曲テスト(CranioCervical Flexion Test:以下CCFT)を行わせ,頸長筋筋厚の変化を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は頸部に既往のない健常男子大学生15名。測定肢位は壁面に肩甲骨,仙骨後面が密着した椅座位とし,座面の高さは両股関節・膝関節が屈曲90°となる様に調節した。後頭隆起下の頸部背側にスタビライザー(chattanooga社製)を置いた。CCFTは20~28mmHgの範囲を2mmHgずつ10秒間保持する様に指示した。その間の頸長筋,頸椎椎体前面,総頸動脈,胸鎖乳突筋を超音波画像診断装置(日立メディコ社製)にて描出した。画像は甲状軟骨より2cm外・下方かつ水平面上で内側に20°傾けた位置とし,頸部長軸と平行にプローブ(10MHz,リニア型)をあてた。測定側は右側とした。測定によって得られた画像から画像解析ソフトImage Jを用い,頸長筋筋厚および胸鎖乳突筋筋厚を測定した。分析は反復測定一元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を行い安静時,各段階を比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】頸長筋筋厚の平均値は安静時0.85±0.16cm,20mmHg時0.93±0.16cm,22mmHg時0.93±0.15cm,24mmHg時0.95±0.17cm,26mmHg時0.94±0.16 cm,28mmHg時0.92±0.17cmであった。頸長筋筋厚は安静時と比較して20mmHg,22mmHg,24mmHgで有意な増大がみられた。胸鎖乳突筋筋厚の平均値は安静時0.56±0.18cm,20mmHg時0.57±0.13cm,22mmHg時0.62±0.13cm,24mmHg時0.64±0.16cm,26mmHg時0.62±0.16cm,28mmHg時0.64±0.17cmであった。胸鎖乳突筋筋厚の増減に有意な差はなかった。【結論】一瀬らは背臥位でのCCFTにて安静時と比較し24mmHg,26mmHg,30mmHgの各負荷段階で頸長筋の筋断面積の有意な増大を示し,背臥位での頸長筋の形状的変化を明らかにしている。本研究は座位での頸長筋筋厚の変化を検討した。安静時と比較し20mmHg,22mmHg,24mmHgの段階の頸長筋筋厚に有意な増大が見られた。しかし,安静時と26mmHg,28mmHgでは有意な差はなかった。これは負荷段階を増加させた際,下位頸椎の伸展運動を行うことで,座位の26mmHg,28mmHg中のCCFTを代償したためと考える。つまり,座位での頭頸部屈曲運動は運動負荷を低く設定する方法が好ましい。したがって,座位の頸長筋のトレーニングでは正しい運動方法および負荷量を明確に設定する必要があると考える。

言及状況

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『座位での頭頸部屈曲運動』 ○後頭隆起下にスタビライザーを置き、頭頸部屈曲テストを20~28mmHgの範囲を10秒間保持する様に指示 ○座位での頸長筋筋厚の変化 ・安静時と比較し20,22,24mmHgの頸長筋筋厚は増大 ・安静時と26,28mmHgでは差はなかった ➡︎低負荷が効果的 https://t.co/huVJTgkiTR

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