著者
市橋 則明 池添 冬芽 羽崎 完 白井 由美 浅川 康吉 森永 敏博 濱 弘道
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.79-83, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
6
被引用文献数
5 5

本研究の目的は,健常男性12名を対象に,各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量を明確にし,さらに各筋のMMT3の筋活動と比較することである。測定筋は,大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋,大内転筋とし,各筋の整流平滑化筋電図を求めた。その結果,両脚ブリッジの筋活動量は20%以下の低い筋活動であった。一方,片脚ブリッジの筋活動量は,股伸展・外転筋で高い値を示し,両脚ブリッジと比較し,すべての筋において有意に増加した。MMT3の筋活動とブリッジ動作を比較すると,大内転筋を除いて片脚ブリッジの方が大きい筋活動を示した。本研究結果より,片脚ブリッジは大殿筋だけでなく中殿筋や大腿筋膜張筋の筋力トレーニングとして有効であることが示唆された。また,片脚ブリッジをするためには,MMT3以上の筋活動が必要であり,訓練処方の1つの基準となると考えられる。
著者
羽崎 完 藤田 ゆかり 山田 遼
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0440, 2012

【目的】 筋連結とは,隣接するふたつの骨格筋において,筋膜,筋間中隔などの結合組織や互いの筋線維が交差して接続していることを指し,全身のいたる所で観察できる。Myersは,個々の筋連結による筋の全身におよぶ連続したつながりを経線としてとらえ,ほとんどの運動が経線に沿って拡がるとしている。つまりこれは,ある筋が収縮したとき,その筋に連なる筋にまで活動が伝達されることであり,この概念は広く臨床に応用されるようになっている。しかし,筋連結や経線についての概念は解剖学的な考察や経験に基づいており,筋の機能的な連結について明確にされていない。我々は,Myersの述べる経線のひとつであるラセン線上にある前鋸筋と外腹斜筋に着眼し,両筋が機能的に筋連結していることを明らかにし,第46回日本理学療法学術大会においてその成果を報告した。本研究では,その延長線上にある菱形筋と前鋸筋も機能的に連結しているか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は,健常成人男性10名(平均年齢21.2±1.8歳,身長170.4±9.7cm,体重65.6±26.2kg)とした。測定は,前鋸筋に負荷を与えたときの前鋸筋と菱形筋の筋活動を導出した。測定肢位は,高さの調節できる椅子に膝関節90°屈曲位になるように座らせ,肘関節伸展位にて肩関節90°屈曲位,肩甲骨最大外転位とした。この肢位で,前腕遠位部に自重(負荷なし),2kg,4kg,6kgの負荷を加え,それぞれ5秒間保持させた。測定筋は第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,菱形筋とした。第6および第8肋骨前鋸筋は肋骨上で触診できる位置に,菱形筋は肩甲骨最大外転位で,僧帽筋下部線維外側縁,肩甲骨内側縁,肩甲骨下角から第5胸椎棘突起を結んだ線でできる三角形内に電極を貼付した。なお、電極が正確に菱形筋に貼付できているか,超音波画像診断装置(日立メディコ社製Mylab25)を用いて確認した。筋活動の測定は,表面筋電計(キッセイコムテック社製Vital Recorder2)を用い,電極間距離1.2cmのアクティブ電極(S&ME社製)にて双極導出した。筋活動の解析は,自重時の平均筋活動量を1として,各負荷における筋活動量の変化率を算出し行った。第6および第8肋骨前鋸筋と菱形筋の関係は,Pearsonの相関係数を求め検討した。さらに,第6肋骨前鋸筋と第8肋骨前鋸筋のどちらがより菱形筋と関係が強いか検討するために重回帰分析を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者の個人情報は,本研究にのみ使用し個人が特定できるような使用方法はしないことや研究の趣旨などの説明を十分に行った上で,対象者の同意が得られた場合にのみ,本研究を実施した。【結果】 Pearsonの相関係数を求めた結果,菱形筋と第6肋骨前鋸筋との相関係数は0.791,第8肋骨前鋸筋との相関係数は0.817となり、いずれも有意な強い正の相関が認められた(p<0.01)。重回帰分析の結果,第6肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.356,第8肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.517となり,第8肋骨前鋸筋にのみ有意な影響が認められた(p<0.05)。【考察】 五十嵐らは解剖実習献体を用いて,菱形筋と前鋸筋が肩甲骨内側縁で線維性結合組織で連結されていることを肉眼にて確認している。また,竹内らも解剖実習献体の大菱形筋付着部を観察し,それが前鋸筋筋膜に折りたたまれるように接着していることを確認している。このように菱形筋と前鋸筋が解剖学的に連結していることは明白であり,菱形筋の筋活動の変化率と前鋸筋の変化率が強い相関を示した今回の結果から,機能的にも連結していることが明らかとなった。一般的に菱形筋は肩甲骨の内転・下方回旋に,前鋸筋は外転・上方回旋に作用し,両筋は拮抗筋の関係にあるとされている。その一方でPatersonが経験に基づき推察しているように菱形筋と前鋸筋は共同筋として肩甲骨の安定に作用していることが知られている。今回の結果は,この推察を科学的に証明した。菱形筋と前鋸筋は,解剖学的にも機能的にもあたかもひとつの筋のように肩甲骨の安定に作用すると考える。また重回帰分析の結果から、第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方がより菱形筋との関係が深い傾向が認められた。これは,第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方が菱形筋の走行の向きに近似しており,肩甲骨の安定に対して共同筋としてより機能しやすいためと考える。Myersもラセン線は前鋸筋のより下部を通過するとしており,下方の前鋸筋の方が菱形筋との関係が深いことが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は,不安定な肩甲骨に対して前鋸筋のみにアプローチするのではなく,菱形筋と前鋸筋をひとつの筋としてアプローチする必要があることを示唆している。
著者
羽崎 完 藤田 ゆかり 山田 遼
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ab0440, 2012 (Released:2012-08-10)

【目的】 筋連結とは,隣接するふたつの骨格筋において,筋膜,筋間中隔などの結合組織や互いの筋線維が交差して接続していることを指し,全身のいたる所で観察できる。Myersは,個々の筋連結による筋の全身におよぶ連続したつながりを経線としてとらえ,ほとんどの運動が経線に沿って拡がるとしている。つまりこれは,ある筋が収縮したとき,その筋に連なる筋にまで活動が伝達されることであり,この概念は広く臨床に応用されるようになっている。しかし,筋連結や経線についての概念は解剖学的な考察や経験に基づいており,筋の機能的な連結について明確にされていない。我々は,Myersの述べる経線のひとつであるラセン線上にある前鋸筋と外腹斜筋に着眼し,両筋が機能的に筋連結していることを明らかにし,第46回日本理学療法学術大会においてその成果を報告した。本研究では,その延長線上にある菱形筋と前鋸筋も機能的に連結しているか否かを明らかにすることを目的とした。【方法】 対象は,健常成人男性10名(平均年齢21.2±1.8歳,身長170.4±9.7cm,体重65.6±26.2kg)とした。測定は,前鋸筋に負荷を与えたときの前鋸筋と菱形筋の筋活動を導出した。測定肢位は,高さの調節できる椅子に膝関節90°屈曲位になるように座らせ,肘関節伸展位にて肩関節90°屈曲位,肩甲骨最大外転位とした。この肢位で,前腕遠位部に自重(負荷なし),2kg,4kg,6kgの負荷を加え,それぞれ5秒間保持させた。測定筋は第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,菱形筋とした。第6および第8肋骨前鋸筋は肋骨上で触診できる位置に,菱形筋は肩甲骨最大外転位で,僧帽筋下部線維外側縁,肩甲骨内側縁,肩甲骨下角から第5胸椎棘突起を結んだ線でできる三角形内に電極を貼付した。なお、電極が正確に菱形筋に貼付できているか,超音波画像診断装置(日立メディコ社製Mylab25)を用いて確認した。筋活動の測定は,表面筋電計(キッセイコムテック社製Vital Recorder2)を用い,電極間距離1.2cmのアクティブ電極(S&ME社製)にて双極導出した。筋活動の解析は,自重時の平均筋活動量を1として,各負荷における筋活動量の変化率を算出し行った。第6および第8肋骨前鋸筋と菱形筋の関係は,Pearsonの相関係数を求め検討した。さらに,第6肋骨前鋸筋と第8肋骨前鋸筋のどちらがより菱形筋と関係が強いか検討するために重回帰分析を行った。【倫理的配慮、説明と同意】 対象者の個人情報は,本研究にのみ使用し個人が特定できるような使用方法はしないことや研究の趣旨などの説明を十分に行った上で,対象者の同意が得られた場合にのみ,本研究を実施した。【結果】 Pearsonの相関係数を求めた結果,菱形筋と第6肋骨前鋸筋との相関係数は0.791,第8肋骨前鋸筋との相関係数は0.817となり、いずれも有意な強い正の相関が認められた(p<0.01)。重回帰分析の結果,第6肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.356,第8肋骨前鋸筋の標準偏回帰係数は0.517となり,第8肋骨前鋸筋にのみ有意な影響が認められた(p<0.05)。【考察】 五十嵐らは解剖実習献体を用いて,菱形筋と前鋸筋が肩甲骨内側縁で線維性結合組織で連結されていることを肉眼にて確認している。また,竹内らも解剖実習献体の大菱形筋付着部を観察し,それが前鋸筋筋膜に折りたたまれるように接着していることを確認している。このように菱形筋と前鋸筋が解剖学的に連結していることは明白であり,菱形筋の筋活動の変化率と前鋸筋の変化率が強い相関を示した今回の結果から,機能的にも連結していることが明らかとなった。一般的に菱形筋は肩甲骨の内転・下方回旋に,前鋸筋は外転・上方回旋に作用し,両筋は拮抗筋の関係にあるとされている。その一方でPatersonが経験に基づき推察しているように菱形筋と前鋸筋は共同筋として肩甲骨の安定に作用していることが知られている。今回の結果は,この推察を科学的に証明した。菱形筋と前鋸筋は,解剖学的にも機能的にもあたかもひとつの筋のように肩甲骨の安定に作用すると考える。また重回帰分析の結果から、第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方がより菱形筋との関係が深い傾向が認められた。これは,第6肋骨前鋸筋よりも第8肋骨前鋸筋の方が菱形筋の走行の向きに近似しており,肩甲骨の安定に対して共同筋としてより機能しやすいためと考える。Myersもラセン線は前鋸筋のより下部を通過するとしており,下方の前鋸筋の方が菱形筋との関係が深いことが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】 本研究の結果は,不安定な肩甲骨に対して前鋸筋のみにアプローチするのではなく,菱形筋と前鋸筋をひとつの筋としてアプローチする必要があることを示唆している。
著者
宮田 信彦 中川 佳久 小串 直也 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0380, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】頸長筋は頸椎椎体の前・側面を走行する頸部屈曲筋として知られ,頸椎の過度な前弯を防ぐ働きがあるとされている。近年,慢性頸部痛に対する頸長筋のトレーニングが注目され,考案されている。生活でヒトは抗重力位に対し,頭頸部を正中位に保持する立位もしくは座位の機会が多い。そのため,頸長筋のトレーニングも立位もしくは座位にて行う方法が一般的である。しかし,背臥位でのトレーニング中の頸長筋についての報告はあるが座位での報告はない。したがって,本研究は座位にて頭頸部屈曲テスト(CranioCervical Flexion Test:以下CCFT)を行わせ,頸長筋筋厚の変化を明らかにすることを目的とした。【方法】対象は頸部に既往のない健常男子大学生15名。測定肢位は壁面に肩甲骨,仙骨後面が密着した椅座位とし,座面の高さは両股関節・膝関節が屈曲90°となる様に調節した。後頭隆起下の頸部背側にスタビライザー(chattanooga社製)を置いた。CCFTは20~28mmHgの範囲を2mmHgずつ10秒間保持する様に指示した。その間の頸長筋,頸椎椎体前面,総頸動脈,胸鎖乳突筋を超音波画像診断装置(日立メディコ社製)にて描出した。画像は甲状軟骨より2cm外・下方かつ水平面上で内側に20°傾けた位置とし,頸部長軸と平行にプローブ(10MHz,リニア型)をあてた。測定側は右側とした。測定によって得られた画像から画像解析ソフトImage Jを用い,頸長筋筋厚および胸鎖乳突筋筋厚を測定した。分析は反復測定一元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定を行い安静時,各段階を比較した。有意水準は5%未満とした。【結果】頸長筋筋厚の平均値は安静時0.85±0.16cm,20mmHg時0.93±0.16cm,22mmHg時0.93±0.15cm,24mmHg時0.95±0.17cm,26mmHg時0.94±0.16 cm,28mmHg時0.92±0.17cmであった。頸長筋筋厚は安静時と比較して20mmHg,22mmHg,24mmHgで有意な増大がみられた。胸鎖乳突筋筋厚の平均値は安静時0.56±0.18cm,20mmHg時0.57±0.13cm,22mmHg時0.62±0.13cm,24mmHg時0.64±0.16cm,26mmHg時0.62±0.16cm,28mmHg時0.64±0.17cmであった。胸鎖乳突筋筋厚の増減に有意な差はなかった。【結論】一瀬らは背臥位でのCCFTにて安静時と比較し24mmHg,26mmHg,30mmHgの各負荷段階で頸長筋の筋断面積の有意な増大を示し,背臥位での頸長筋の形状的変化を明らかにしている。本研究は座位での頸長筋筋厚の変化を検討した。安静時と比較し20mmHg,22mmHg,24mmHgの段階の頸長筋筋厚に有意な増大が見られた。しかし,安静時と26mmHg,28mmHgでは有意な差はなかった。これは負荷段階を増加させた際,下位頸椎の伸展運動を行うことで,座位の26mmHg,28mmHg中のCCFTを代償したためと考える。つまり,座位での頭頸部屈曲運動は運動負荷を低く設定する方法が好ましい。したがって,座位の頸長筋のトレーニングでは正しい運動方法および負荷量を明確に設定する必要があると考える。
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
大原 昌之 羽崎 完 大場 かおり 柴田 健治 森澤 早苗 石原 崇史
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.7, pp.430-431, 1994-11-30

患側上肢に奇妙な不随意動作を認めた右片麻痺の一症例を経験した。症例は74歳。女性。左前頭葉後部の皮質下出血による右片麻痺を呈していた。発症後6日目に血腫除去術が施行された。発症後約5週頃より右手で眼前の物を不随意的に取り上げる動作を示した。患者の示した不随意動作は道具の強迫的使用現象の不完全型であると考えられた。本症例では, 不随意動作が患者の治療課題遂行やADLを阻害しているのか否かに留意し, 理学療法を実施した。
著者
浅川 康吉 市橋 則明 羽崎 完 池添 冬芽 樋口 由美
出版者
一般社団法人日本理学療法学会連合
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.75-79, 2000-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
14
被引用文献数
5

踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの設定が,立脚側の股関節周囲筋の筋活動量に与える影響について筋電図学的検討を行った。対象は健常男性13名(25.9 ± 3.8歳)で,股関節周囲筋として大殿筋,中殿筋,内転筋,大腿筋膜張筋,および大腿直筋を選択した。踏み台昇降動作は,前方,後方,側方の踏み台の位置と,10cm,20cm,30cmの高さを組み合わせた計9通りで行った。統計学的分析には二要因とも対応のある二元配置分散分析を用いた。その結果,踏み台の位置は中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響し,踏み台の高さは大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋の筋活動に影響していた。内転筋と大腿直筋には交互作用が認められた。股関節周囲筋では,踏み台昇降訓練における踏み台の位置や高さの影響が各筋ごとにそれぞれ異なると考えられた。
著者
宮田 信彦 小串 直也 中岡 伶弥 中川 佳久 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-53_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】頸長筋(以下:LC)は頸椎椎体の前・側面を走行する頸部屈曲筋として知られ,頸椎の過度な前弯を防ぐ働きがあるとされている。Jullらが頭頸部屈曲テスト(以下:CCFT)を報告して以来,CCFTはLCの評価,治療として広く用いられている。CCFTは従来,背臥位にて行われる方法であるが,日常生活において,ヒトは重力に抗して頭頸部を正中位に保持し,立位もしくは座位をとることが多い。そこで我々は座位にてCCFTを行わせ,LC筋厚が安静時よりも有意に増大することを報告した。しかし,背臥位と座位のCCFTを直接比較はしていない。そこで本研究は,CCFTを背臥位・座位の2条件で実施し,姿勢の違いが LC筋厚に及ぼす影響を確認することを目的とした。【方法】対象は頸部に既往のない健常男子大学生とし,背臥位群9名,座位群16名とした。測定肢位はそれぞれ,膝を屈曲した背臥位,壁面に肩甲骨,仙骨後面が接した椅座位とした。頭部位置は背臥位で床と平行,座位で壁面と平行とした。後頭隆起下の頸部背側にスタビライザー(chattanooga 社製)を置いた。強度はスタビライザーの圧センサーの目盛りが指し示す22~28mmHgの範囲を2mmHgずつ,それぞれ10秒間保持させた。その間のLC,頸椎椎体前面,総頸動脈,胸鎖乳突筋を超音波画像診断装置(日立メディコ社製)にて描出した。プローブ(10MHz,リニア型)は甲状軟骨より 2cm 右・外・下方かつ水平面上で内側に20°傾けた位置とし,頸部長軸と平行にあてた。測定によって得られた画像から画像解析ソフト Image J を用い,LC筋厚を測定した。その後,安静時のLC筋厚を基準としたCCFT時のLC筋厚の増減を安静時比として表した。統計学的手法は,姿勢と強度の2要因における対応のない二元配置分散分析およびBonferroniの多重比較検定にて,背臥位と座位のLC筋厚の安静時比を比較した。【結果】LC筋厚の平均値は安静時(背臥位1.14±0.11cm,座位0.82±0.16cm)となった。安静時比はそれぞれ22mmHg時(背臥位112.8±9.6%,座位113.4±10.8%),24mmHg時(背臥位111.3±9.5%,座位115.7±13.2%),26mmHg時(背臥位117.2±12.0%,座位115.2±13.1%),28mmHg時(背臥位120.8±13.2%,座位113.4±11.9%)となった。二元配置分散分析の結果,姿勢,強度を要因としたLC筋厚の安静時比に有意な主効果および交互作用は認めなかった。【結論(考察も含む)】我々は先行研究においてLC筋厚が座位でのCCFTによって安静時よりも有意に増大したことを報告している。また,一瀬らはLC筋厚が背臥位でのCCFTによって安静時よりも有意に増大したことを報告している。今回の結果で背臥位,座位といった姿勢の違いがLC筋厚の安静時比に有意な影響を与えなかったことから,座位のCCFTにおいても背臥位と同様の効果が期待できると考える。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は大阪電気通信大学における生体を対象とする研究および教育に関する倫理委員会の承認を受けた研究の一部であり,被験者の同意のもと実施した(承認番号:生倫認14-007号)。また被験者には研究中であっても不利益を受けることなく,同意を撤回することができることを説明した。情報の安全管理は個人情報や測定データは匿名化し,被験者の同意なく第三者提供しないよう研究従事者すべてに周知徹底した。
著者
小串 直也 中川 佳久 宮田 信彦 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0712, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】高齢者の多くは加齢に伴い特有の不良姿勢をとり,その中でも頭部前方突出姿勢は臨床において頻繁に観察される。頭頸部は嚥下機能と強く関係していることから,頭部前方突出姿勢は嚥下機能に影響を与えると考える。また,嚥下時の食塊移送には舌の運動が重要であり,舌筋力の低下は嚥下障害の原因のひとつである。しかし,高齢者の頭部前方突出姿勢が舌筋力に与える影響についての報告はない。そこで,本研究は高齢者の頭部前方突出姿勢が舌筋力に与える影響について検討した。【方法】対象はデイサービスを利用している神経疾患の既往のない虚弱高齢者16名(平均年齢85.6±7.7歳)とした。使用機器は舌筋力計(竹井機器工業株式会社製)と舌圧子(メディポートホック有限会社製)を用いた。測定は舌突出力と舌挙上力の2項目とし,各2回ずつ測定した。舌突出力の測定は口唇に舌圧子を当て,舌を最大の力で突き出させた。舌挙上力の測定はまず被験者に開口させ,口腔内で舌圧子を固定し,舌を最大の力で押し上げさせた。また,被験者の第7頸椎棘突起にマーカーを貼り付け,測定中の頭頸部をデジタルビデオカメラ(SONY社製)により撮影した。その後,Image Jにて第7頸椎棘突起を通る床との水平線と第7頸椎棘突起と耳珠中央を結んだ線のなす角を計測し,舌突出力測定中および舌挙上力測定中の頭蓋脊椎角(以下CV角)を算出した。測定肢位は端座位とし,頭部をアゴ台(竹井機器工業株式会社製)に固定した。分析は各々2回の平均値を代表値とし,舌筋力とCV角の関係を明らかにするために,Spearmanの順位相関係数を求めた。【結果】舌突出力は平均値0.23±0.10kg,舌突出力測定中のCV角は平均値29.50±5.79°となり,相関係数R=0.70で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。舌挙上力は平均値0.22±0.09kg,舌挙上力測定中のCV角は平均値29.57±5.74°となり,相関係数R=0.72で有意な正の相関を認めた(p<0.01)。【結論】今回,高齢者の舌筋力とCV角の間に有意な正の相関を認めた(p<0.01)。このことから,高齢者の舌筋力と頭部前方突出姿勢は関係していることが明らかになった。舌筋力の低下は嚥下障害における原因のひとつであり,実際に嚥下障害患者に対して舌負荷運動が実施される。また,舌と姿勢の関係について頸部の屈伸や回旋が舌運動や舌圧に与える影響については報告されてきた。しかし,高齢者の頭部前方突出姿勢と舌筋力の関係については報告されていなかった。CV角は頭部前方突出の程度を表現しており,加齢とともに小さくなる。頸椎の過剰な前彎を伴う頭部前方突出姿勢では舌骨下筋群が伸張され,舌骨を下方に引くと考える。舌骨には舌筋の一つである舌骨舌筋が付着しており,舌骨の下方偏位は舌の運動を阻害するため,舌筋力とCV角の間に有意な相関を認めたと考える。したがって,舌筋力の向上には姿勢の改善が必要であると考える。
著者
峯松 亮 羽崎 完
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.128-129, 2011-04-20 (Released:2018-08-25)
参考文献数
6
被引用文献数
2

本研究は,デイサービス利用高齢者を対象に,足底への振動刺激(FVS)がバランス機能に与える影響を調査することを目的とした。対象高齢者は要支援1から要介護4のいずれかの介護認定を受けている18名(84.9 ± 5.0歳)であった。対象者へのFVSを15分間/回,2回/週で3ヵ月間実施した。対象者へのFVSの介入前後に,重心動揺計にて開眼時と閉眼時の重心動揺パラメータを測定した。また,10 m自然歩行時間(10 m歩行),Timed Up & Goテスト(TUG),ファンクショナルリーチテスト,体重負荷率を測定した。さらに足底の痛覚および二点識別覚を調べた。その結果,開眼時の総軌跡長,外周面積,実効値面積,実効値,Y方向最大振幅および閉眼時の総軌跡長はFVS介入後に有意に低値を示した。10 m歩行,TUGはFVS介入後に有意に低値を,体重負荷率は有意に高値を示した。痛覚は小指球および踵部はFVS介入後に有意に低値を示した。本研究では,FVSの実施によりバランス機能の改善が認められた。FVSは足底感覚を改善することにより,体重負荷率の増加をもたらすと考えられ,これにより重心動揺が減少(特に前後方向動揺)し,立位時の安定性が改善したと考えられる。また,10 m歩行,TUGの有意な減少は動的バランス機能が改善したためと考えられ,FVSの実施による足底感覚の改善,体重負荷率の増加が下肢の運動機能に何らかの影響を与えた可能性が考えられる。
著者
中岡 伶弥 櫃ノ上 綾香 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.AbPI1071, 2011

【目的】<BR> 筋連結とは,筋と筋のつながりのことを指し,隣接する筋の間は筋膜,筋間中隔などの結合組織や互いの筋線維が交差している。筋が連結している部位では,片方の筋が活動したとき,その筋に連なるもう一方の筋にまで活動は伝達するとされている。このことは,PNFやボイタなどの治療法にも応用されている。しかし,筋が連結しているかどうかについては,解剖学的な考察や経験に基づいており,筋の機能的な連結については明らかではない。そこで本研究では,前鋸筋と外腹斜筋に着眼し,この2筋間に機能的な筋連結が存在するのかを明確にすることを目的とした。<BR>【方法】<BR> 対象は健常成人男子大学生14名 (平均年齢21.1±0.7歳,身長172.4±5.6cm,体重62.4±8.4kg)とした。測定方法は,ベンチプレス台の上で背臥位になり,肩関節90°屈曲位で肩甲帯を最大前方突出させた。その肢位で,自重(負荷なし),体重の30%負荷・60%負荷をベンチプレスで荷重し,5秒間保持させた。施行順はランダムとした。測定は第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,外腹斜筋の3箇所とし,前鋸筋は肋骨上で皮膚表面から視察・触察できる位置に,また,外腹斜筋は腸骨稜と最下位肋骨を結ぶ中点から内側方2cmの位置に筋線維の走行に沿って電極を貼った。筋活動の導出には表面筋電計(キッセイコムテック社製 Vital Recorder2)を用い,電極(S&ME社製)は,電極間距離1.2cmで双極導出した。サンプリング周波数1kHzとした。基準値を設定するために,徒手抵抗による最大等尺性収縮(Maximum Voluntary Contraction,以下MVC)時の表面筋電図を記録した。各筋のMVCの数値を100%とし,各負荷における数値を除した%MVCを算出した。解析方法は,第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,外腹斜筋それぞれにおいて,自重,30%負荷,60%負荷の3群をFriedman検定を用いて比較し,多重比較検定としてScheffeの対比較検定を用いた。また,有意水準を5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> すべての被験者に対し,本研究の趣旨を口頭および文書にて説明し,署名にて研究協力の同意を得た。<BR>【結果】<BR> 第6肋骨前鋸筋の筋活動量の50パーセンタイル値は,自重で30.8%MVC,30%負荷で40.0%MVC,60%負荷で52.9%MVCであり,Friedman検定の結果,自重より60%負荷が有意に高値を示した(P<0.05)。第8肋骨前鋸筋の筋活動量においても50パーセンタイル値は,自重で22.5%MVC,30%負荷で22.9%MVC,60%負荷で24.7%MVCであり,自重より60%負荷が有意に高値を示した(P<0.05)。外腹斜筋の筋活動量の50パーセンタイル値は,自重で12.6%MVC,30%負荷で17.1%MVC,60%負荷で26.3%MVCであり,自重より30%負荷・60%負荷の2群で有意に高値を示した(P<0.05)。いずれの筋においても30%負荷,60%負荷の間には有意な差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 前鋸筋と外腹斜筋の関係については,これまでに荒山らによって検討されている。彼らは,体幹筋強化トレーニングとして用いられるTrunk Curlを使用して,前鋸筋と外腹斜筋の筋連結を検討することを目的にしていた。それは,1)肘伸展0°,肩90°屈曲位で,最大努力で肩甲帯前方突出を行いながら,上体を起こす。 2)肘伸展0°,肩90°屈曲位で肩甲帯前方突出をせずに,上体を起こす。3) 胸部前面で,腕を組み上体を起こす。という3種類の上体起こしにより関係を示している。その結果として,前鋸筋の活動は外腹斜筋の活動を高めることが示唆され,付着部を共有し,筋線維走行の方向が一致する筋の相互作用を期待したエクササイズの有効性が示唆されたとしている。しかし,この方法では,上体を起こすことによって直接的に外腹斜筋を働かせているため,機能的な筋連結を明確にするという点では不十分である。そのため,本研究では外腹斜筋の作用である体幹の反対側への回旋や同側への側屈,前屈が起こらないように,被験者には背臥位でベンチプレスを荷重させた。直接的に外腹斜筋を活動させる条件下でないにも関わらず,前鋸筋の筋活動量が増すにつれ,外腹斜筋の筋活動量も増加した。肩甲帯の前方突出により前鋸筋が収縮すると,肩甲骨は外転し,胸郭は上方に引き上げられる。しかし,前鋸筋が最大筋力を発揮するためには,胸郭の固定が必要である。そのため,胸郭を下方に引き下げる外腹斜筋が固定筋として作用したため,外腹斜筋の活動がみられたと考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究で得られた結果は,治療にも役立てられるのではないかと考える。例えば,翼状肩甲の治療には前鋸筋のトレーニングが必要だといわれている。しかし,翼状肩甲の治療において筋連結を考慮すると,前鋸筋へのアプローチだけでなく,それに併せて外腹斜筋へのアプローチも行うことで,より肩甲骨の安定性は増すのではないかと思われる。
著者
中岡 伶弥 櫃ノ上 綾香 羽崎 完
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.AbPI1071, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 筋連結とは,筋と筋のつながりのことを指し,隣接する筋の間は筋膜,筋間中隔などの結合組織や互いの筋線維が交差している。筋が連結している部位では,片方の筋が活動したとき,その筋に連なるもう一方の筋にまで活動は伝達するとされている。このことは,PNFやボイタなどの治療法にも応用されている。しかし,筋が連結しているかどうかについては,解剖学的な考察や経験に基づいており,筋の機能的な連結については明らかではない。そこで本研究では,前鋸筋と外腹斜筋に着眼し,この2筋間に機能的な筋連結が存在するのかを明確にすることを目的とした。【方法】 対象は健常成人男子大学生14名 (平均年齢21.1±0.7歳,身長172.4±5.6cm,体重62.4±8.4kg)とした。測定方法は,ベンチプレス台の上で背臥位になり,肩関節90°屈曲位で肩甲帯を最大前方突出させた。その肢位で,自重(負荷なし),体重の30%負荷・60%負荷をベンチプレスで荷重し,5秒間保持させた。施行順はランダムとした。測定は第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,外腹斜筋の3箇所とし,前鋸筋は肋骨上で皮膚表面から視察・触察できる位置に,また,外腹斜筋は腸骨稜と最下位肋骨を結ぶ中点から内側方2cmの位置に筋線維の走行に沿って電極を貼った。筋活動の導出には表面筋電計(キッセイコムテック社製 Vital Recorder2)を用い,電極(S&ME社製)は,電極間距離1.2cmで双極導出した。サンプリング周波数1kHzとした。基準値を設定するために,徒手抵抗による最大等尺性収縮(Maximum Voluntary Contraction,以下MVC)時の表面筋電図を記録した。各筋のMVCの数値を100%とし,各負荷における数値を除した%MVCを算出した。解析方法は,第6肋骨前鋸筋,第8肋骨前鋸筋,外腹斜筋それぞれにおいて,自重,30%負荷,60%負荷の3群をFriedman検定を用いて比較し,多重比較検定としてScheffeの対比較検定を用いた。また,有意水準を5%未満とした。【説明と同意】 すべての被験者に対し,本研究の趣旨を口頭および文書にて説明し,署名にて研究協力の同意を得た。【結果】 第6肋骨前鋸筋の筋活動量の50パーセンタイル値は,自重で30.8%MVC,30%負荷で40.0%MVC,60%負荷で52.9%MVCであり,Friedman検定の結果,自重より60%負荷が有意に高値を示した(P<0.05)。第8肋骨前鋸筋の筋活動量においても50パーセンタイル値は,自重で22.5%MVC,30%負荷で22.9%MVC,60%負荷で24.7%MVCであり,自重より60%負荷が有意に高値を示した(P<0.05)。外腹斜筋の筋活動量の50パーセンタイル値は,自重で12.6%MVC,30%負荷で17.1%MVC,60%負荷で26.3%MVCであり,自重より30%負荷・60%負荷の2群で有意に高値を示した(P<0.05)。いずれの筋においても30%負荷,60%負荷の間には有意な差は認められなかった。【考察】 前鋸筋と外腹斜筋の関係については,これまでに荒山らによって検討されている。彼らは,体幹筋強化トレーニングとして用いられるTrunk Curlを使用して,前鋸筋と外腹斜筋の筋連結を検討することを目的にしていた。それは,1)肘伸展0°,肩90°屈曲位で,最大努力で肩甲帯前方突出を行いながら,上体を起こす。 2)肘伸展0°,肩90°屈曲位で肩甲帯前方突出をせずに,上体を起こす。3) 胸部前面で,腕を組み上体を起こす。という3種類の上体起こしにより関係を示している。その結果として,前鋸筋の活動は外腹斜筋の活動を高めることが示唆され,付着部を共有し,筋線維走行の方向が一致する筋の相互作用を期待したエクササイズの有効性が示唆されたとしている。しかし,この方法では,上体を起こすことによって直接的に外腹斜筋を働かせているため,機能的な筋連結を明確にするという点では不十分である。そのため,本研究では外腹斜筋の作用である体幹の反対側への回旋や同側への側屈,前屈が起こらないように,被験者には背臥位でベンチプレスを荷重させた。直接的に外腹斜筋を活動させる条件下でないにも関わらず,前鋸筋の筋活動量が増すにつれ,外腹斜筋の筋活動量も増加した。肩甲帯の前方突出により前鋸筋が収縮すると,肩甲骨は外転し,胸郭は上方に引き上げられる。しかし,前鋸筋が最大筋力を発揮するためには,胸郭の固定が必要である。そのため,胸郭を下方に引き下げる外腹斜筋が固定筋として作用したため,外腹斜筋の活動がみられたと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 本研究で得られた結果は,治療にも役立てられるのではないかと考える。例えば,翼状肩甲の治療には前鋸筋のトレーニングが必要だといわれている。しかし,翼状肩甲の治療において筋連結を考慮すると,前鋸筋へのアプローチだけでなく,それに併せて外腹斜筋へのアプローチも行うことで,より肩甲骨の安定性は増すのではないかと思われる。
著者
池添 冬芽 市橋 則明 羽崎 完 森永 敏博
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.59-63, 2001-03-31
被引用文献数
1

本研究の目的は, 段差昇降動作における昇降動作様式の違いおよび下腿の肢位によって, 膝周囲筋の筋活動がどのように変化するかを明らかにすることである。対象は健常女子学生18名であった。測定筋は右下肢の大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋とし, 前方昇降動作と後方昇降動作をそれぞれ下腿中間位, 下腿内旋位, 下腿外旋位で行わせたときの筋電図を分析した。前方昇格および後方昇降動作の筋活動量を比較すると, 大腿直筋, 内側広筋, 外側広筋においては前方昇降動作より後方昇降動作の方が有意に大きな筋活動量を示した。また, 下腿の肢位による変化は, 内側広筋, 半膜様筋, 大腿二頭筋において認められ, 内側広筋, 大腿二頭筋では下腿外旋位, 半膜様筋では下腿内旋位で最も大きな値を示した。これらのことから, 段差昇降訓練を行う場合, 段差昇降様式の違いではハムストリングスに対する負荷は変化しないが, 大腿四頭筋に対しては, 前方昇降より後方昇降させる方が大きな負荷量が得られること, さらに内側広筋をより収縮させたい場合には下腿外旋位で段差昇降を行うことが有効であることが示唆された。