著者
谷川 智也 新田 佳也子
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.E-206_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに・目的】 近年、自転車エルゴメーター(以下、エルゴメーター)が脳卒中片麻痺患者の機能回復運動として有用であることが報告されている。また、先行研究において新野等は慢性期の脳卒中片麻痺患者において自転車エルゴメーター施行後の歩行における効果を述べている。しかし、回復期脳卒中片麻痺患者を対象とした検証は少ない。本症例はT杖歩行自立しているが、「もう少し早く歩きたい」との訴えがあった。そこで今回、回復期脳卒中片麻痺患者においる自転車エルゴメーター駆動後の歩行能力の変化について検討を行ったので報告する。【方法】 対象は50歳代女性。左片麻痺。発症から3ヶ月経過。Brunnstrom recovery stage上肢Ⅲ、手指Ⅲ、下肢Ⅳ。脳卒中機能障害評価法(以下、SIAS)運動機能5項目(2,1C,3,4,1)で、感覚は表在・深部ともに中等度鈍麻。歩行はプラスチックAFO使用し屋内T杖歩行自立。片脚立位は左2.04秒、右4.19秒。10m歩行(最大速度)は18.71秒であった。 エルゴメーターは、COMBI WELLNESS社製2100Uを用いた。負荷量20W、運動時間は5分間で運動強度は年齢推定予測最大心拍数(220-年齢)の60%の値と自覚的運動強度(Borg2~3)を指標とし、リズミカルに駆動でき、連合反応を生じない回転速度(50rpm)とした。以上の内容を通常の理学療法に加え12日間施行した。評価として自転車エルゴメーター施行前後において、片脚立位時間と10m歩行時間を計測した。統計方法は片脚立位時間と10m歩行時間の結果から、それぞれt検定にて比較検討した。【結果】 片脚立位時間は左4.01秒、右5.71秒に改善を認め、さらに左右共に施行前に比べて施行後は有意に時間の延長を認めた。(P<0.05)10m歩行時間(最大速度)は15.81秒となり、施行前に比べて施行後は有意に時間の短縮を認めた。(P<0.05)【考察】 片脚立位においては、エルゴメーターによって固有感覚受容器への刺激が増大し、それに伴って協調的な筋収縮と弛緩のタイミングを強化できた為と考える。また、吉田らは脳卒中片麻痺患者におけるエルゴメーターは体幹筋やバランス促通に効果があるとしており、10m歩行においては、協調的な活動が強化できたことで歩行速度や立位バランスに影響をもたらしたものと考える。 今回の結果から、回復期脳卒中片麻痺患者における自転車エルゴメーターの活用が歩行能力向上に有効であることが示唆された。 【倫理的配慮,説明と同意】本報告は、ヘルシンキ宣言に則り実施し、対象者には研究内容の説明を口頭と書面にて実施し、署名にて同意を得た後に実施している。

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