著者
山本 晃輔
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.94, pp.281-301, 2014-05-31 (Released:2015-06-03)
参考文献数
13
被引用文献数
1

グローバリゼーションを背景として,人の国際移動は質・量ともに大きく変容した。国際移動が多様な姿を見せるにつれて,我が国においても人の国際移動と教育に注目があつまるようになった。本稿では,ブラジルへ帰国した日系ブラジル人の子どもたちに焦点を当て,日本とブラジルを移動する彼らの将来展望の多様性を事例に,「移動の物語」という観点からグローバリゼーションと教育の問題についてアプローチすることを目指した。 本稿では帰国した日系ブラジル人のうち,計画的に帰国した「デカセギ型」家族を抽出し,親の高い教育期待とその取り組みについて概観した。 次に,親の教育と期待を受けてブラジルで大学進学していく子どもたちを見出した。ブラジルで大学へと進学した子どもたちは,日本での体験にピリオドをうつ「切断」の物語に特徴がある。他方で,親の期待や配慮とはうらはらにブラジルでの教育達成を目指さない・目指すことができなかった子どもたちがいる。なかでも再渡日を目指す子どもたちの特徴は,いまもなお日本との移動が継続し「接続」しているという語りにある。 そして,子どもたちの帰国後の将来展望と進路選択が分岐する要因として,言語能力や学校適応などと並び,帰国後に構築される「移動の物語」が大きな影響を与えていることを明らかにした。

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[越境] ("ブラジルのメリトクラシーは急速に進行" "大学進学しなければブラジルでも「普通の職業につけない」からである。" )( 切断と接続 )

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