著者
石長 孝二郎
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.76, no.5, pp.99-108, 2018-10-01 (Released:2018-11-06)
参考文献数
29

【目的】がん治療対策食を考案するための予備的検討として,女子大学生を対象に,食材の温度とアンモニア混入時の食物臭に対する快・不快の相違を検討した。【方法】観察研究用の食材試料は煮魚煮汁とグレープフルーツ果汁,さらに各々に0.1%アンモニアを混入した試料の計4種類とした。食材試料の温度は 25°Cと 55°Cとし,ニオイ分析はにおい識別装置を用いた。また,女子大学生へのニオイに対する快・不快の評価はビジュアルアナログスケールで実施した。【結果】食材試料を55°Cに加温すると,煮魚煮汁は不快な気分となるが,グレープフルーツ果汁は快(心地よい)な気分のままであった。次に室温 25°Cで,試料に0.1%アンモニアを混入すると,煮魚煮汁は不快な気分が強くなるが,グレープフルーツ果汁は快な気分が維持されていた。しかし,今まで快な気分を維持していたグレープフルーツ果汁が0.1%アンモニアの混入と 55°Cの加温の2つの条件が加わると急激にビジュアルアナログスケール得点の低下が起こった。【結論】グレープフルーツ果汁は悪臭を中和もしくはマスキングする可能性が示されたが,その反応はある一定レベルの状態でプラトーに達し,残った悪臭が加温により上昇気流にのり,嗅上皮の嗅細胞にたどりつき,主観的な快な気分を打ち消した可能性が考えられた。

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